6.ビッグゲーム開始、クライシス・ミッション!!
――挨拶もそこそこに、同じ舞台で戦うことになったゲーム戦士たちが、握手を交わし、あるいは再戦を誓い合う。参加選手はちょうど20名。
終末都市の中心にそびえ立つタワーのエントランスにて、彼らはゲーム前のコミュニケーションを取り合っていた。
ゲーミングモニター越しに交わされるチャットとはまた違う、格別な熱量とゲームへの意気込みが肌で感じられる。
先程は『シャッフル』の桐山剣と、『エレメント◇トリガーズ』の火野暁斗ことキッド――二人の主人公による交流もあった。
他の場所でも、様々な戦士たちが驚きや緊張を分かち合い、和気あいあいとした雰囲気が漂っている。……ちなみに、SNSへのリアルタイム投稿は規約違反なのでNGだ。
今回の舞台は、血も涙もない機械にまみれた『終末都市』。そんな呑気な様子でいていいものだろうか。何やら、不穏な気配が運営側から漂い始めているようだが……!
『――間もなく、ビッグゲーム開会式を執り行います。参加選手の皆様は、エントランスのメインモニター前までお集まりください』
主催である管理組織WGCのAIナビゲーターが、淡々と開会を告げる。
剣とキッドは一旦別れて自チームの元へ戻り、学校の朝礼のように整然とした列の中に加わった。
――時刻は午前8時。
ゲームワールドオンライン・ビッグゲーム、開会式の始まりである。
『――本日は、我々【WGC】主催のイベントゲームにご参加いただき、誠にありがとうございます。今回のゲームは、WGC代表取締役社長・本宮マサトの指名により、選ばれし20名のゲーム戦士たちにある【極秘任務】を成し遂げていただくことが最大の目的となります』
(極秘任務…………?)
剣をはじめとする半数のプレイヤーが、その言葉に眉をひそめた。
エンターテインメントの余興にしては、あまりに物騒な響きだ。
WGCのトップによる直々の指名であること、そして集められた面々が実力者揃いであることも、その疑惑を深めていた。
『ゲーム形式は、全プレイヤーで協力し合うマルチプレイ。そして参加者が全滅した時点で終了となるサバイバル形式です。4つのステージを制し、最終目的である極秘任務をクリアした者が、完全制覇の称号を得られます』
では、今回のゲーム概要を説明しよう!
――――――――PLAY GAME――――――――
☆ビッグイベントゲーム☆
【クライシス・ミッション―CRISIS MISSION―】
・ジャンル:サバイバルアタックゲーム
・プレイヤーレベル:測定不能
【ルール】
・参加者20名によるサバイバル形式。
・4つのステージをクリアし、【極秘任務】をすべて成功させた者が完全制覇者となる。
1st STAGE カードゲーム『AMAZING』
2nd STAGE FPSゲーム『A.I.M.S』
3rd STAGE リアル脱出ゲーム『ESCAPE』
FINAL STAGE 【?????】
※各ステージの【極秘任務】を達成しない限り、完全制覇は不可能。
――――――――――――――――――――
随所に不穏な気配を覗かせながらも、表向きのゲーム性がそれを巧妙に覆い隠している。だが、一度ゲームが始まれば本気で挑むのが戦士の性だ。
集まったのは、優勝賞品や名誉を求める猛者たち。どんな真実が隠されていようと、戦い抜くのが彼らの宿命であった。
『では、概要説明を終わります。続いて、主催の本宮マサト社長よりメッセージが届いておりますので、代読いたします』
(そこは本人じゃねぇのかよ)
代表取締役らしい多忙さを匂わせつつ、AIナビゲーターが社長の言葉を読み上げる。
『――【今回のゲームに参加してくれた誉れ高き諸君へ。まずは、8時15分より1分間の黙祷を行っていただきたい】』
「…………は!?」
唐突な黙祷の指示に、戦士たちは唖然とした。プレイギアで時刻を確認すれば、15分まであと1分を切っている。
(どういうことだ? 広島の平和式典じゃあるまいし……)
(待って、今日は8月6日よ! 式典じゃなくても黙祷しなきゃ!)
(あっ…………そうか。今日は……!)
剣は仲間のみのりに諭され、ある事実に思い至った。
――遡ること1945年8月6日。
広島の上空で一個の原子爆弾が炸裂した。
人類史上初めて実戦で使用された、忌まわしき核兵器である……!
『黙祷……!!』
仮想現実の世界に、鎮魂の鐘の音が鳴り響く。
この物語の近未来では、平和への祈りが継続され、核兵器が実戦で使われることのない未来が保たれている。しかしその裏では、核実験や核兵器保持を巡る問題が山積みとなっていた。
いつ、どこで、いかなる理由で戦争が引き起こされるか分からない。現代以上に緊迫した情勢にある近未来。
この平和の祈りさえ、いつ風化し、同じ過ちが繰り返されるか分からないのだ。
『黙祷、終わり』
数分前までの賑わいは消え、厳かな空気が場を支配していた。沈黙の中、本宮社長のメッセージが再開される。
『【この1分間、君たちは何を感じただろうか? 今の時代を平和だと思ったか? 祈りは無意味だと感じたか? 今回のゲームは、その気の緩み一つで一瞬にして全滅へ追い込まれるものと覚悟しておきたまえ】』
それは皮肉にも似た宣告だった。そしてこの後、戦士たちはその言葉の真意を突きつけられることになる。
『【君たちが自分の時代を本気で生きる覚悟があるのなら、このゲームには命を懸けて挑んでほしい。そうすれば【極秘任務】の真相も明らかになるだろう。――人間が犯した業は、今を生きる人間の手で片付けるのだ……!!】』
―――シュンッ!
メッセージの終了と同時に、有無を言わさぬ転送が始まった。
戦士たちの姿がエントランスから消えていく。
クライシス・ミッション、1st STAGEの幕開けである……!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽
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