4.集えよ強者、ビッグゲーム前夜!!
――『A.I.M.S』のゲーム実況配信が終わり、キッドこと火野暁斗は、アバターの仮面を脱ぎ捨てるような心地でチャット欄の反響を確認していた。
〘ないすぅ!〙
〘GG!!〙
〘PAS使ってないのに撃破するの凄すぎ〙
〘タップストレイフ、参考になりました〙
〘地底空間の救世主・エレメント◇トリガーズに贈ります! ¥10,000〙
配信中に送られたコメントを、キッドはスクロールしながら一つ残らず目を通していく。時折『赤スパ』と呼ばれる高額の投げ銭――スーパーチャットが流れると、「スパチャありがとうございます」と画面の向こうへ律儀に礼を返した。
「……肯定的なコメントが増えてきたな。昔は罵詈雑言の嵐だったってのに。こうも手のひらを返されると、逆に気味が悪いぜ」
苦笑混じりに独り言を呟く。そこへ――。
「それだけお前の実力が認められたってことだろ。もう少し誇ってもいいんじゃねぇか?」
「ハリアーか。だったらお前もノックアウトされてねぇで、さっさと俺に追いつけよ。人気を独り占めしちまうぞ」
「うるせぇ、たまたま調子が悪かっただけだ!」
軽妙なやりとりを仕掛けてきたのは、緑のマフラーがトレードマークの男。キッドの幼馴染であり、チームメイトの『ハリアー』こと風見颯だ。
「まぁ、A.I.M.Sでこれだけ実力を見せつけられたんだ。今度は他のゲームも配信でやってみるのはどうだ?」
ハリアーが提案する。現在、このチャンネルで配信しているのは『A.I.M.S』一本のみ。視聴者層を広げるためには、多角化も必要だというわけだ。
「他のゲームって、何をやるんだよ」
「今流行りの『AMAZING』!」
「カードゲームかよ! そりゃ方向性がガラッと変わりすぎる。厳しいんじゃねぇか?」
キッドの反応は消極的だった。FPS一筋の彼にとって、頭脳戦略が重視されるカードゲームは、畑違いにも程がある。
「心配ねぇよ。カードの構成次第じゃ、俺たちが銃を使って戦うようなデッキも組めるんだ。A.I.M.Sの要領でも充分通用するぜ」
「ふーん、今どきのカードゲームは懐が深いんだな。道理で『ゲームワールドオンライン』のメインコンテンツに採用されるわけだ」
VRMMO『ゲームワールドオンライン』は、A.I.M.Sをも内包する地球最大規模のオンラインプラットフォームだ。その基幹タイトルとして『AMAZING』が君臨している事実は、そのゲーム性の高さを何よりも裏付けていた。
「まぁ、やるからには準備しないとな。パックを買って、デッキを作って、実際に戦って……」
「待った。そんな悠長な事する前に、丁度良いイベントがあるんだよ。プレイギアからゲームワールド公式のメールが届いてる」
「はぁ?」
キッドは急な展開に困惑する。ハリアーは万能スマホ『プレイギア』を操作し、そのメールを彼に見せた。
◇――――――――――――――――――◇
【WGC総本部からの重要通知】
・社長特選により、ゲーミングチーム『エレメント◇トリガーズ』メンバー6名を特別イベントへ招待いたします。
・開催日:8月6日
・競技種目:『AMAZING』『A.I.M.S』他
・会場:ゲームワールドオンライン・シークレットエリア
・優勝賞品:『A.I.M.Sマネー・5,000,000コイン』他
現実世界内のモノリスにて以下のパスワードを入力し、エントリーしてください。
PASS:『194508060815』
◇――――――――――――――――――◇
一読したキッドが自分のプレイギアを確認すると、同様のメールが届いていた。そして、もう一つ気になる点が。
「トリガーズのメンバーが……6人? 俺とハリアーと、『アリス』と『ツッチー』――まさか、天ちゃんと琴ちゃんもか!?」
「そう。俺たちのチームを応援する双子チアガール、天音と琴音もだ。アイツらも同じメールを受け取ってキャーキャー言ってるぜ」
「でも、彼女ら一度も試合したこと無いんだぜ?」
「このイベントで試合デビューってのも、悪くないと思うがな。二人共応援動画でチームに貢献してるし、そろそろ戦わせてもいいだろう。俺っちは賛成だ」
「う~~~ん…………」
キッドはリスクを考え真剣に悩む。
――結局のところ、数日後に仲間と集まり、天音と琴音も含めて全員で参加することに落ち着いた。決め手となったのは、やはり賞金だ。A.I.M.Sの仮想通貨『5,000,000コイン』。その大金は、何よりも強く彼らの背中を押した。
▶▶▶ NEXT▽
――ビッグゲームの主役となる戦士たちが続々と、招待状に導かれていく。
一体誰が、何のために、彼らを集め、巨大なゲームを仕掛けようとしているのか。
平和主義者は、地上と地底の二つの空間で活躍する戦士たちの力を競う、純粋なエンターテインメントだと考えた。
商業主義者は、『AMAZING』と『A.I.M.S』のユーザー拡大を狙った、大規模なプロモーションだと考えた。
しかし、その答えはいずれも【否】。
真実は、ゲームワールドオンラインを管理する組織【WGC】の代表取締役社長、本宮マサトのみが握っていた。
「8月6日開催のイベント、準備は整っているか?」
『はい、滞りなく。招待メールを送ったユーザーの98%は同意済みです』
「……残りの2%は辞退か」
『はい。その日はスケジュールを空けられないとのことです』
「宜しい。ならば追加投入だ。今から私が送るアドレスへ招待状を送信しろ」
『畏まりました』
沈着冷静、かつ効率重視。
地球規模のVRMMOを管理する社長は、一切の妥協を許さない。その瞳の奥には、非凡な信念に裏打ちされた、静かな情熱が滾っていた。
最終調整を終えた本宮は、ゲーミングチェアに深く背中を預け、一息つく。
そして、誰に聞かせるでもなく、心の内を吐露した。
「暴力に自惚れた人間どもの業を、同じ人間が始末できるか……彼らに託してみよう」
WGCの社長は何を企んでいるのか。思わぬ形で幕を開ける、ゲーム戦士たちのビッグゲーム。
この戦いに求められる結末は、勝利か、それとも――。
『ゲームウォーリアー』と『A.I.M.S』、二つの世界が交差する物語がいま、動き出す。
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




