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婚約破棄されたので掲示板に愚痴ったら家族が全員いた件【連載版】  作者: あゆと
第一部

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5/23

第3話【表】 「寝付けないと言ったら、伝説の暗殺者が可愛いスタンプを誤爆した件」


1 スレ主


最近


寒くて寝付けないです




2 名無しの剣士


寒いのか




3 名無しの大黒柱


確認する




4 名無しの掃除屋


冬前に、

少し掃除が必要かもしれませんね




5 名無しの一般人


また始まった




――



 夜。



 私はベッドの中で、

 毛布にくるまっていた。



 寒い。



 暖炉はついている。



 窓も閉めた。



 毛布も二枚。



 でも。



 なぜか足先だけ冷たい。



 眠れない。



 だから、

 いつもの掲示板を開いた。



――




6 名無しの魔導師


室温は




7 スレ主


普通だと思います


でも寒いです




8 名無しの淑女


まあ


温かい飲み物を飲みましょうね




9 名無しの大黒柱


断熱材か




10 スレ主


たぶん違います




11 名無しの剣士


では何故寒い




12 名無しの一般人


知らんがな




――



 今日もみんな、

 少し大げさだ。



 でも。



 こうして返事が来ると、

 少し安心する。



 私は毛布の中で、

 足をこすり合わせた。



――




13 名無しの影


……寒さの原因




14 スレ主


寒さの原因?




15 名無しの影


北の寒波魔獣




16 名無しの一般人


物騒なの来た




17 スレ主





18 名無しの影


殺す




――



 寒波魔獣。



 なんだろう。



 たぶん、

 そういう冗談だと思う。



 ネットの人って、

 時々こういう遊びをするし。



――




19 名無しの剣士


誰だ




20 名無しの掃除屋


……その口調


随分と懐かしいですね




21 名無しの大黒柱


北の方の流儀か




22 名無しの一般人


何それ怖い




23 名無しの影


スレ主様の安眠を妨げるものは


全部消す




24 名無しの剣士


待て




25 名無しの影


待たない




26 名無しの一般人





――



 なんだろう。



 この人。



 すごく物騒なのに、

 ちょっと面白い。



――




27 スレ主


でもありがとう


ネットのお友達って頼もしいですね




――



 一瞬だけ、

 掲示板が止まった。



――




28 名無しの掃除屋


あーあ




29 名無しの剣士


固まったぞ




30 名無しの一般人


今の効いたな




31 名無しの淑女


まあまあ




――



 効いた?



 何がだろう。



 私は首を傾げた。



 それから。



 なんとなく、

 犬の魔導スタンプを送った。



――




32 スレ主


【ふわふわ犬が毛布にくるまっているスタンプ】




33 スレ主


寒いので


みなさんも暖かくしてくださいね




――



 また。



 掲示板が止まった。



 最近、

 よく止まる。



 通信、大丈夫かしら。



 そう思った時。



――




34 名無しの影


【黒い犬が尻尾を振っているスタンプ】




35 名無しの一般人


犬派だったか




36 名無しの剣士


おい




37 名無しの掃除屋


可愛らしい趣味ですねえ




38 名無しの魔導師


保存した




39 名無しの一般人


消されるぞそれ




40 名無しの剣士


消せ




41 名無しの影


……消せ




42 名無しの大黒柱


もう遅い




43 名無しの掃除屋


こちらでも保存しました




44 名無しの影


……殺す




45 名無しの一般人


物騒すぎる




46 名無しの淑女


ふふふ




――



 たぶん。



 スタンプを間違えたのだと思う。



 かわいい。



――




47 スレ主


影さん


犬好きなんですね




48 名無しの影


……はい




49 名無しの一般人


素直だな




50 名無しの剣士


認めるな




51 名無しの掃除屋


珍しいものを見ました




52 名無しの魔導師


記録更新




53 名無しの影


……忘れろ




――



 私は毛布の中で笑った。



 掲示板って、

 やっぱり少し不思議だ。



 顔も知らないのに。



 名前も知らないのに。



 こうしていると、

 一人じゃない気がする。



――




54 スレ主


みなさん仲良しで


なんだかほっこりします




55 名無しの剣士


仲良しではない




56 名無しの掃除屋


腐れ縁ですね




57 名無しの一般人


否定はしないんだな




58 名無しの大黒柱


長い付き合いだ




59 名無しの影


スレ主様がそう言うなら


そう




60 名無しの一般人


重いなこの人




61 名無しの剣士


お前


そんな喋れたのか




62 名無しの掃除屋


犬のスタンプは予想外でした




63 名無しの影


……忘れろ




――



 よく分からないけど、

 やっぱり仲良しだと思う。



 私は小さく欠伸をした。



 なんだか、

 少し眠くなってきた。



――




64 スレ主


そろそろ寝ます


みなさんも夜更かししすぎないでくださいね




65 名無しの淑女


おやすみなさい




66 名無しの大黒柱


安心して眠れ




67 名無しの掃除屋


良い夜を




68 名無しの影


安眠の敵は


殺す




69 名無しの一般人


まだ言ってる




70 名無しの剣士


ほどほどにしろ




71 スレ主


おやすみなさい




――



 私は端末を閉じた。



 毛布を鼻まで引き上げる。



 足先は、

 まだ少し冷たい。



 でも。



 胸のあたりは、

 少しあたたかかった。



 ネットのお友達って、

 優しい。



 ちょっと物騒だけど。



――翌朝――



 ベッドが、

 ふかふかだった。



 昨日より暖かい。



 毛布も増えている。



 しかも。



 すごく肌触りが良い。



「……すごい」



 私は毛布に包まったまま、

 しばらく動けなかった。



 幸せ。



 ぬくぬくだ。



――昼休み――



 私は掲示板を開いた。



――




101 スレ主


毛布が増えてました


ぬくぬくです




102 名無しの剣士


良かった




103 名無しの影


……




104 名無しの掃除屋


間に合いましたか




105 名無しの一般人


何が間に合ったんだよ




106 名無しの魔導師


保温効果上昇確認




――



 みんな、

 なぜか満足そうだった。



 よく分からないけど、

 たぶん良いことなのだと思う。



 私は紅茶を飲んだ。



 暖かい。



 幸せ。



 その時。



 窓の外で、

 女子たちの声が聞こえた。



「えっ、限定ケーキ完売!?」


「朝から大行列だったらしいよ!」


「王都の新作でしょ?」



 限定ケーキ。



 私はぴたりと止まった。



 ……食べたかった。



 すごく。



 気になっていたのに。



 昨日、

 寒くて出る気になれなかったから。



 私は静かに端末を開く。



――




1 スレ主


限定の新作ケーキ


売り切れてました




2 名無しの一般人


あっ




3 名無しの掃除屋


……は?




4 名無しの剣士


誰だ




5 名無しの影


店はどこ




6 名無しの一般人


ケーキ屋逃げて

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