表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたので掲示板に愚痴ったら家族が全員いた件【連載版】  作者: あゆと
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/23

第11話【裏】「掲示板のみんなへお礼がしたいと言ったら、世界中が匿名配送の研究を始めた件」


 侯爵家。



 夜。



 父の書斎。



 静かな部屋へ、

 端末の光だけが浮かんでいた。



――


11 スレ主


でも


何か渡したいです


――



 父の手が止まる。



 数秒。



 完全な沈黙。



「……まずいな」



 低い声だった。



 側近が顔を上げる。



「何がです?」



「娘が、

 掲示板の連中へ贈り物をしたがっている」



「良い話では?」



「匿名掲示板だぞ」



 側近の顔から、

 血の気が引いた。



「あっ」



――



 兄の詰所。



 兄は端末を凝視していた。



――


16 スレ主


手作りクッキーとかどうでしょう?


――



「手作り」



 兄が立ち上がる。



「欲しい」



 部下が真顔になる。



「団長」



「欲しい」



「二回言いましたね」



 兄はかなり本気だった。



――



 妹の部屋。



 少女は、

 静かに端末を見ていた。



――


46 スレ主


届けられないのが残念です


――



 机の上には、

 昼間一緒に焼いたクッキー。



 包み紙まで、

 姉が選んでいた。



 少女は、

 しばらくそれを見つめる。



「……届けたい」



 小さな呟き。



 次の瞬間。



 空間転送術式が、

 一斉に展開された。



――



 社交界。



 母は夜会の途中だった。



 だが。



 端末を見た瞬間、

 扇子を閉じる。



――


46 スレ主


届けられないのが残念です


――



「まあ……」



 かなり痛そうな顔だった。



 貴婦人たちが首を傾げる。



「どうかなさいました?」



「いえ……」



 母は小さくため息を吐く。



「世界とは、

 時に残酷ですわね」



 誰も意味が分からなかった。



――



 北の城。



 元魔王は、

 端末を見たまま固まっていた。



――


46 スレ主


届けられないのが残念です


――



「……届ければ良い」



 部下が震える。



「どうやってです?」



「知らん」



「知らないんですか」



「だが欲しい」



 かなり正直だった。



――



 別の国。



 白い宮殿。



 金髪の青年が、

 静かに立ち上がる。



「匿名配送網を作れ」



 側近が固まる。



「何用でしょうか」



「クッキーだ」



「はい?」



「急げ」



 説明ゼロだった。



――



 裏通り。



 掃除屋は、

 葉巻を咥えながら端末を見ていた。



「困りましたねえ」



 黒服が尋ねる。



「何がです?」



「お嬢さんが、

 お礼をしたがっている」



「良いことでは」



「受け取れません」



 黒服が真顔になった。



「あっ」



 理解は早かった。



――



 深夜。



 父の書斎。



 机の上へ、

 次々と報告書が積まれていく。



『空間転送術式による匿名受領案』


『裏社会匿名配送網構築案』


『外交特権輸送ルート案』


『転移門転送案』


『痕跡消去補助案』



 父は、

 静かに目を閉じた。



「……お前たち、

 本当に何をやっているんだ」



 側近が遠い目をする。



「全員、

 本気ですね」



「娘の手作りだぞ」



 父は即答した。



 かなり本気だった。



――



 父は、

 報告書を一枚ずつ読む。



 妹の術式案。



 掃除屋の物流案。



 金髪の輸送案。



 元魔王の転移門。



 影の痕跡消去。



 全部、

 異常にレベルが高い。



 父は額を押さえる。



「……成功率は」



 側近が答える。



「匿名性維持率、

 現状四十二%です」



「低いな」



「はい」



 父はしばらく黙る。



 それから。



「改善しろ」



 かなり欲しかった。



――



 一方その頃。



 厨房。



 リーナは、

 焼き上がったクッキーを箱へ詰めていた。



「うーん……」



 少し悩む。



「やっぱり、

 渡せないよねえ」



 しょんぼりしていた。



 その隣で。



 妹が、

 ものすごい速度で術式を書き換えていたことを。



 リーナは、

 まだ知らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ