第6話【表】「散歩中にちょっとしゅんとしてしまったと書き込んだら、特定班が10分で全部終わらせていた件」
1 スレ主
裏山すごく綺麗でした
でも
ちょっと嫌なこと思い出して
少ししゅんってしました
2 名無しの剣士
誰だ
3 名無しの掃除屋
何がありました?
4 名無しの一般人
どしたん?話きこか?
――
夜。
私はベッドの中で、
端末を見ていた。
今日は楽しかった。
裏山も綺麗だったし。
空気も気持ち良かった。
花も可愛かった。
でも。
帰り道で、
少しだけ嫌な気分を思い出してしまった。
婚約破棄のこととか。
学園で噂されてることとか。
だから。
ちょっとだけ、
しゅんとしてしまったのだ。
――
5 名無しの剣士
裏山で何があった
6 名無しの掃除屋
時間帯は
7 スレ主
お昼くらいです?
8 名無しの魔導師
十分
9 名無しの一般人
何が十分なんだ
――
なんだろう。
急にみんな真面目になった。
でも。
この掲示板、
たまにこういう空気になる。
――
10 名無しの魔導師
裏山周辺の魔力波長を照合
11 名無しの掃除屋
周辺監視網を確認します
12 名無しの一般人
もう調べてるのか
――
私は毛布にくるまりながら、
端末を眺めた。
なんだか、
また話が大きくなっている気がする。
――
13 スレ主
別にもう大丈夫ですよ?
14 名無しの剣士
こちらは大丈夫ではない
15 名無しの魔導師
精神的被害あり
16 名無しの一般人
温度差すごいな
――
私は少し笑った。
なんだか、
家族会議みたい。
――
17 名無しの魔導師
特定完了
18 名無しの一般人
早くないか
19 名無しの魔導師
あとは任せて
20 名無しの剣士
了解
21 名無しの掃除屋
承りました
22 名無しの大黒柱
処理する
23 名無しの一般人
連携が怖い
――
なんだか。
掲示板が盛り上がっている。
私は温かいミルクを飲みながら、
ぼんやり眺めた。
楽しそう。
――
24 スレ主
みなさん仲良いですね
25 名無しの一般人
そう見えるのか
26 名無しの剣士
仲良くはない
27 名無しの掃除屋
役割分担ですねえ
――
私は少し笑った。
でも。
なんだかんだ、
楽しそうなのは本当だと思う。
――
28 名無しの一般人
そういえば最近王都静かだよな
29 名無しの一般人
摘発めっちゃ増えてるらしい
30 名無しの一般人
怖すぎる
31 名無しの掃除屋
掃除は大切ですよ
32 名無しの一般人
説得力がない
――
私は小さく欠伸をした。
なんだか眠くなってきた。
――
33 スレ主
私はそろそろ寝ます
みなさん夜更かししすぎないでくださいね
34 名無しの剣士
良い夢を
35 名無しの掃除屋
おやすみなさい
36 名無しの魔導師
監視継続
37 名無しの一般人
魔導師だけちょっと怖い
――
私は端末を閉じた。
今日はいっぱい歩いたし。
ぐっすり眠れそう。
――翌朝――
教室へ入る。
空気が妙に静かだった。
みんな、
ひそひそ話をしている。
そして。
昨日、
私に嫌味を言ってきた令嬢の席が、
空だった。
「……あれ?」
その時。
廊下の向こうから、
泣き声が聞こえた。
「そんな……!
お父様が……!」
教師たちに囲まれながら、
誰かが泣いている。
私は目を瞬かせた。
なんだろう。
すごいタイミング。
――昼――
食堂。
今日は静かだった。
妙に。
貴族科の人たちも、
こそこそ話をしている。
でも。
誰も、
私には近寄ってこない。
平和だ。
すごく平和。
私は紅茶を飲みながら、
ほっと息を吐いた。
――
61 スレ主
なんか今日は静かです
62 名無しの一般人
でしょうね
63 名無しの剣士
平和になったな
64 名無しの掃除屋
今日も穏やかです
65 名無しの魔導師
ノイズ消失確認
66 名無しの一般人
言い方怖いな
――
私は少し笑った。
最近。
この掲示板を見ていると、
安心する。
なんだか。
変な人たちだけど。
みんな優しいから。
――夜――
ベッドへ入る。
今日は、
嫌なことがなかった。
平和。
とても平和だ。
でも。
平和すぎると、
少し退屈かもしれない。
私は端末を開いた。
――
1 スレ主
なんだか最近平和ですね
何か面白いこと起きないでしょうか
2 名無しの剣士
嫌な予感がする
3 名無しの掃除屋
おやおや
4 名無しの一般人
やめてくれ




