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BMP187  作者: ST
第六章
342/343

朱雀の女性の扱い方

「なるほど。付き合うことになったのね」

特に驚いた様子もなく、机の向こうで赤神瑠璃は言った。


「いいって言ったんですけど、刹那がどうしてもお嬢様に報告しないといけないって」

奏音が少し不満そうに言う。

一方の刹那は冷や汗をかいている。


「いえ、私としても、ここに御厄介になったばかりでさすがに節操がないとは思うのですが……」

「恋に時間は関係ないよ!?」

「……任務には支障がないようにしますので、どうかお認めいただけないかと…」

「刹那、硬すぎ…」

刹那は奏音が柔らかすぎだと思っている。

性格のせいだけとも思えない。瑠璃と奏音には特別な関係があるような気がした。


「まぁ、部下の恋路をとめるほど無粋ではないつもりだけど。堅物の刹那をどうやって落としたかは気になるわね」

「……そ、それは……」

「刹那、言ってやっちゃって♪」

上機嫌な奏音だが、それほど高度なテクニックは使用されていない。

『澄空悠斗は剣麗華みたいな超絶美少女と天竜みたいなエロい人を侍らせてるんだから、せめて私クラスの美少女と付き合ってないと太刀打ちできないよ』と脅迫されたのだ。

今考えるとさすがにおかしいと気づけるのだが、撤回できる雰囲気ではなかった。


「付き合うのは構わないけど、言っておくことがあるわ」

「は、はい」

「奏音はこう見えて純情よ」

「はい?」

高めの疑問符が出た。

「手を出すなら、ある程度覚悟を決めてもらわないと困るわ」

「そ、それはもちろん」

そもそも手を出す予定がない。

「というか、朱雀の女性を相手に浮気は命がけよ。どうしても嫌になったら、相手が飽きるか死ぬのを待った方が安全だから」

「は、はい」

とんでもない物件をつかんだことに気がついたが、事前説明がなかったのだから仕方がない。



☆☆☆☆☆☆☆



麗華さんのマンションのリビングで朝会うと天竜院先輩が土下座してきた。

後ろには火野先輩も控えている。

麗華さんはいない。外出したらしい。


「申し訳ありません。我が主」

「どうしたんですか?」

絶対に俺が怒るようなことではないと思うが、聞いてみる。

「我が主のクローン、叢雲刹那と闘ったのですが、BMP能力を複写されてしまいました」

「なんと」

あいつ、複写系だったのか……。

しかも天竜院先輩を複写するとは……。

「強敵だったんですね」

もちろん、怒るわけがない。


「いえ、私が自分で撃って複写させました」

「は?」

「ひっ……!?」

土下座したまま天竜院先輩が悲鳴を上げる。


「も、ももも、申し訳ありません、我が主! あ、くび。首を落とします!」

室内にもかかわらず帯刀していた刀を抜く。

「ま、ままま、待ってください! 怒ってない。怒ってないですから!」

「でも、『は?』って言った!」

確かにちょっと低めの声が出たけど!


「ちょっとビックリしただけで……。何か理由があるんですよね?」

「う……」

天竜院先輩は捨てられた子猫のような目をする。


「そ、その……。あの男、我が主の遺伝子を使っただけあり、なかなかの器量良しでして……」

確かに。

本当に俺がオリジナルか疑われるレベルのイケメンではあった。

「練度も、並大抵の鍛錬ではあのようにはなりません。私と同じ、武に人生を捧げた者だと」

武に人生を捧げた割には、天竜院先輩もヤツも容姿のアドバンテージが大き過ぎて不公平だと感じるのだが。

「しかも、身を挺して主を守ったのです」

心までイケメンじゃないですか。


「奴ならば、我が主が腕や足を失った時、その身体が我が主の一部になってもいいかなと」

うちの天竜さん、ちょっと過激ですね……。

「なので、勝手に死なれると困ると思い、私のBMP能力を複写させました」

……ちょっと理解しにくいかも。


「……すみません。若干、調子に乗りました」

「調子に乗っちゃったんですか?」

「乗っちゃいました……」

こんな美人でオトナっぽい先輩が調子に乗ったとか言われると、かなり違和感があるな……。


「澄空様、よろしいでしょうか?」

なぜか後ろに控えていた火野先輩が口を開いた。

「澄空様は透子様が落ち着いていて凛々しい女性だとお思いでしょうが、昔はポンコツな上に調子に乗りやすいところがありまして」

「火野!?」

「澄空様の天竜になってから再発した感じなのです」

約定してから再発するなど、クーリングオフ案件ではあるまいか。

もちろん今さら返品するつもりはないが。

「昔は調子に乗った透子様を私がフォローしていましたので、ちょっと懐かしい感じです」

さすが五竜のリーダー。


「どうしてバラしてしまうんだ……。我が主に軽蔑されたらどうする……?」

「このくらいで軽蔑する主が、透子様を選ぶわけがないじゃないですか」

「確かに」

納得したよ……。


「では、この件はこれでおしまいということで」

「ま、待て。まだ我が主にお許しをいただいていない」

「許すとおっしゃってたじゃないですか」

おっしゃってない。まぁ、もともと怒ってはいないが。


「だ、だめだ。我が主はお優しすぎるのだ。天竜たるもの、主の優しさに甘えてはいけない。けじめはつけないと……!」

「ポンコツ回帰したくせに、面倒なところはそのままなんですから……」

天竜の僕たる火竜とは思えないセリフを吐く、火野先輩。

そのまま何やら天竜院先輩に耳打ちすると、我が天竜は顔に疑問符を浮かべたまま、俺に背を向けた。


「なっ……!?」

いきなり、火野先輩が天竜院先輩のスカートを捲り上げた。

モデルのような美脚と下着が露わになる。

「ななな、何を考えている、火野!」

「? お仕置きと言えばおしりペンペンかと。最後にされたお仕置きもこれでしたかと」

「未就学時の話だ! 私はもう高校生だぞ!」

「高校生にもなって、幼稚園児並みに調子に乗るのが悪いのでは?」

「あぅ」

あぅ、ではない。


「透子様に、ほかのお仕置きが提案できるなら、それがいいとは思うのですが」

「っ!? お、お仕置きの提案などできるものか!」

「澄空様も、お仕置きのレパートリーは多くはないと思われます」

多くてたまるか。


「では、そのテーブルに身体を預けてください」

「わ、わかった」

なんでわかっちゃうかなぁ。

天竜院先輩の胸がテーブルで潰れて、えらい格好になっている。


「こ、こんな情けない格好……。我が主に見捨てられたら、どうしてくれる……」

「大丈夫です、透子様。女の私でもどうにかなりそうなくらいエロいです」

女の子でもどうにかなりそうな格好を、恋人のいる男の前でさせないで欲しい。


「我が主……。お見苦しいものをお見せしてしまい、申し訳ありません……」

全くお見苦しくはなく、芸術的なヒップラインを見てしまった俺が申し訳なくなる状況である。


「ですが、これで我が主のお怒りが静まるのであれば、存分にお叩き下さい」

……だから、怒ってない。

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