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BMP187  作者: ST
第六章
341/343

朱雀の恋人

「赤沢のBMP能力を複写させてくれ」

「……優しくしてよ」

「もちろんだ」

目を閉じた奏音の頭に、銃を突きつける。

「そういえば、あのBMP能力の名前は何だ?」

「……輪火フレイムトリガー

「え?」

刹那が驚いた声を出す。

「? 刹那?」

「いや……」

刹那が何かを思い出すかのように、腕を振る。

すると、奏音と同じ戦輪の炎が出現した。

「ど、どうして……?」

まだ、奏音は刹那の銃で撃たれていない。


「話は後だ。合わせるぞ」

「わ、分かった」

奏音からも戦輪の炎が出現する。


「いくぞ、赤沢!」

「は、はい!」

鏡に映したかのような動きで、刹那と奏音が後ろ回し蹴りを放つ。


「「シュート!!」」

2個の戦輪の炎が、先ほどの2倍の勢いで迫る。

「38式、飛竜」

突然、天竜院透子が、予備動作なしであり得ない高さまで飛翔して輪火フレイムトリガーをかわす。九尾をバネに使ったのだろう。


「汎用性が高過ぎる……っ」

刹那が呻く。

「でもチャンスだよ! ちょっと怖いけど、着地に合わせれば、輪火フレイムトリガーを直接当てられる」

「違う! あいつに隙なんかない!」

刹那の叫びを肯定するかのように、天竜の背後で九尾が蠢く。


「68式、天空槍」

天井近くの天竜から、九尾の槍が降ってくる。

天竜院流の奥義にしては狙いが少し甘いが、奏音は対応できていない。

見切った刹那が、奏音を庇って左肩を切裂かれた。

「せ……刹那……っ!?」

「気を抜くな! まだ来るぞ!」

刹那の傷に顔を青くする奏音とは対照的に、刹那は天井近くの天竜から目をそらさない。


天空槍で床に突き刺さった九尾の一本が不自然に揺れる。

その九尾を使って任意の位置に落下……もとい強襲できることは明らかだった。

「我が主の御手を煩わせるに相応しい敵であるか……。見定めてやる」

天竜院透子の髪が虹色に輝く。

さきほどとは比較にならないプレッシャーが、刹那と奏音の身体を射抜いてくる。

「あ……あれが天竜……」

「上等だ!」

奏音を庇いながらも、闘志を高める刹那。

頭上の天竜は、余った九尾を剣に纏わせる。


「斬岩剣・くだく

道化師トリックスター輪火フレイムトリガー!」

九尾を纏わせた剣と戦輪の炎が激突……しなかった。

九尾を操って軌道を変更した透子は、刹那への強襲を避け、何事もなかったように別の場所に着地していた。


「な……なによ、それ!」

いきなり真剣勝負を避けた天竜に、奏音が怒りをぶつける。

「悪いな。我が身は全て我が主のものなのだ。うかつに傷つけるわけにはいかん」

「な……なにを……?」

「疑問を抱くのはこちらだ。側近とはいえ、当主の護衛ごときがどうして、そこまで強力な炎を操ることができる?」

天竜院透子の疑問に、奏音が言葉を詰まらせる。


「それに……。至高の我が主の遺伝子とはいえ、あのお方のBMP能力はそもそも遺伝子に宿っていない。並のBMP値しかないはずの朱雀の次元獣が、どうしてあれほどのBMP能力を操ることができるのか……。からくりに想像はついたぞ」

「暴れまわるだけかと思ったら……。頭まで切れるのか……」

苦しそうに肩で息をする刹那も、奏音の横で苦い顔をした。


「助言を求められない限り推理はしない。見たままを伝えるのが良い天竜だ。もっとも、私はまだまだしつけがされていないから、衝動を我慢できずに主を失望させることもあるが……」

そう言って、天竜は残忍な笑みを浮かべた。


「鍛えぬかれた肉体。執念すら感じる練度。そして騎士道精神。……良かったな。我が主の遺伝子を弄んだとはいえ、殺さなくても良いと考えるほどには、私は貴様を評価したぞ」

傲慢に告げる天竜の手には、なぜか刹那の道化師トリックスターの銃が握られていた。


「い、いつの間に……!?」

「これで撃てばいいようだな……」

天竜は自分の左手を、刹那の銃で撃った。

「な、なにやってんの!?」

常軌を逸した行動に、奏音が悲鳴をあげた。


「殺さなくても良いと考えた……と言っただろう? 我が主は自分のためのクローンなど絶対に認めないからな。いざというときに、貴様の身体が我が主の一部になるなら、私としても許容できる」

全く目の笑っていない天竜の言葉に、刹那と奏音が絶句した。



☆★☆★



ハイクアッドホテルの激闘から一夜明けて。

文字通り泥のように眠っていた叢雲刹那はノックの音で目を覚ました。


ドアを開けると、なんとなく予想通りに奏音がいた。知り合いが少ないのだから仕方ない。


「刹那。肩は大丈夫?」

「肩?」

神妙な奏音に言われて、天竜に左肩を切裂かれたことを思い出す。

「? いや、全く……」

あまりにも痛みがなさ過ぎて忘れていたのだ。

肩をはだけて確認してみるが、カスリ傷一つできていない。


「切り裂くと同時に治療されたんだね」

「……そんなことができるのか?」

疑問には思ってみたが、それしか思いつかない。

分かってはいたが、あの天竜は凄まじ過ぎた。


「刹那。あの人に勝てる?」

「…………」

確率でいうと、極めて低い。

しかし。


「天竜を退けなければ、澄空悠斗と闘えない」

「うん……」

「澄空悠斗と闘えないなら、俺の人生は終わる」

「そ……!?」

「終わるだけなんだ」

「え?」

奏音の目が驚きに見開かれる。


「終わるだけなんだよ、赤沢。恐怖も不安もないよ」

「…………」

「?」

「…………奏音って呼んで」

「え?」

今度は刹那が疑問符を浮かべる。

なお、奏音の好感度が大幅に上がった(80/100)。


「刹那に質問があります」

「ど、どうした、いきなり?」

奏音の様子が、普段の明るい調子とは全く違うので、刹那は混乱していた。

「刹那の好みの女性は何ですか?」

「本当に、どうした!?」

「もちろん、ただでとは言わないわ」

「いや、対価を求めている訳ではなくてだな……」

「パンツでいい?」

「ただで聞いてくれ!!」

自分のミニスカートに侵入しようとした奏音の腕をつかんで、刹那は悲鳴を上げた。


奏音は、キョトンとした後、ハッとした。

「確かに、今日は可愛いの履いてない……」

「違うんだ。デザインを問題にはしてないんだ」

必死に訴える刹那。


「こんなところを瑠璃様に見られたら、殺される」

ここ数日で、赤神瑠璃が思ったより優しい主であることは分かったが、対価に同僚のパンツを求める男には容赦しないだろう。

「瑠璃のことなら、気にしなくていいよ」

「?」

「瑠璃もパンツで交渉するタイプ」

「嘘をつけ!」

叫んではみたものの、自分より遥かに付き合いの長いであろう奏音の言葉は無視できない。

大抵のことに覚悟を決めた刹那だが、ご主人様から、パンツを対価に命令されるのは、さすがに避けたいところだった。


「と、とにかく、好みの女性だな」

「う、うん!」

目をキラキラさせる美少女を見て、刹那は気が重くなった。

刹那はつい先日まで、赤神信彦に研究施設に閉じ込められていたのだ。

「すまん……。女性の知り合いが、赤沢か……」

「奏音!」

「……奏音か瑠璃様くらいしかいなくて、良く分からないんだ」

「それって、実質、私だけってこと?」

「なぜ、瑠璃様を実質から外す?」

その理由は不明だが、とりあえず奏音の好感度は上がった(85/100)。


「ラノベやアニメなら心得があるんだが……」

「うん。それでもいいよ」

物分かりの良いギャル系美少女に見つめられながら、やはり刹那は困った。

息抜きにエンタメを消費してはいたものの、そもそも自分が異性と親しくする未来などあり得ないと思っていたのだ。

だが、目をキラキラさせている奏音には言いにくい。


「ミニスカート……」

「へ?」

「ミニスカートが似合う女性は魅力的だと思う」

「……」

「……」

「…………それは好みの女性のタイプではなく、好みの性癖では?」

「そうだな……。すまん」

謝ってはみるが、正直嘘ではなかった。

特に、昨日、輪火フレイムトリガーを発動した奏音のことは、素直に美しいと思ったのだ。


奏音はミニスカートの裾を掴んで考える。

「つまり、私は刹那のタイプ?」

「い、いや、アニメの話だ」

ミニスカートが魅力的なアニメヒロインの名前を何人か挙げてみる。

「生身のミニスカートはダメ? 違いを教えてくれたら、善処するよ?」

だが、刹那は逃げられない。

ミニスカート以外に条件を出さなかったのは失敗だった。

実際のところ、女性の選り好みなどできる立場ではないのだが。

(……そうか。それを言えばいいのか)


「BMP能力の特性上、俺の寿命は短い。……そして、澄空悠斗を諦めることはできない。女性と付き合うなんて不可能だ」

しかし、なぜか奏音が胸を張る

「それなら大丈夫」

「?」

意図がつかめない刹那の耳に奏音の口が寄る。


「私も、二十歳までは生きられない身体だからさ」

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