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BMP187  作者: ST
第六章
340/343

天竜vs朱雀

(これではまずい……)

カラドボルグでファイアオークの首を次から次に刎ねながら、剣麗華は危機感を持っていた。

(悠斗君が私の戦術を真似てくれない……)

大問題だった。

(きっと私のような大出力系BMP能力者が、一体ずつ倒していくというのが気に入らないんだ……)

悠斗が絡むと順調に見る目が曇る麗華は、難度が高過ぎて真似られないとは思いもしなかった。

(とはいえ、レーヴァテインで会場ごと焼き尽くしたら、悠斗君は絶対怒る)

当たり前である。

(恋人としていまいち役に立っていないのに、戦闘でも役に立たないと、今度こそ悠斗君に捨てられるかもしれない……)

2万%ない現象だが、生憎と澄空悠斗に弁明の機会が付与されていなかった。


(大量に倒し、かつ効果範囲を絞る)

無茶苦茶な矛盾を抱えた方針だが、恐ろしいことに剣麗華には、そういう新幻想剣に心当たりがあった。

「…………」

精神を集中する。

ファイアオークが次々突入してくる天井の割れたガラスのさらに上に、無数の剣が出現する。


「堕ちろ天剣。フローレンベルク召喚」

剣麗華の詠唱に合わせて、無数の剣がパーティー会場に落下してきた。



☆☆☆☆☆☆☆



空から落ちてきた無数の剣は、ファイアオークの体を貫いた瞬間に小爆発を起こす。

パーティ会場のほぼ全域で、凄まじい勢いで炎の幻影獣の数が減っていく。


天征剣ヘブンブレイドに似てはいるが……」

叢雲刹那が呻く。

あちらは剣の形をした爆弾を広範囲に無差別に投下するBMP能力である。

いや、おそらくこちらのBMP能力も本来はそういった性能なのだろうが……。

「あれだけの数の剣をファイアオークの真上に落とすコントロールといい、幻影獣の内部から爆散させるだけの最小限の威力に抑える制御力といい……。次元が違いすぎるな。手に負えない」

「え、刹那、諦めちゃうの?」

剣麗華のおかげで戦況に余裕ができたので、赤沢奏音は息を整えているところだった。


「俺の目標は澄空悠斗だ。剣麗華は相手にしなくていいと信彦が言っていた」

「相手にしなくていいならそれに越したことはないけど。あんな化け物……」

「それより、あっちは避けられないぞ」

刹那の見据える先では、黒木と前川が、澄空悠斗の天竜と揉めていた。


◇◆


「つまり、澄空悠斗の天竜たる、この私の実力を確かめたいと?」

天竜院透子は、南の朱雀の若い二人の戦士に話しかける。

「そちらのお姫様のおかげでファイアオークの数が減ったからね。鑑定に備えて、戦力を把握したい」

「ふむ……」

主が鑑定を必要としている以上、透子としても朱雀の戦力を測ることは有益ではあるのだが……。

(見た感じ、この2人では弱過ぎるな……。時間の無駄かもしれない)

だいぶ失礼なことを考えていた。

(青龍は論外としても、朱雀も当主直属の護衛がこの程度なのか? それとも、我が主の陣営が強すぎるのか?)

おそらく後者である。


「ん?」

透子が迷っているうちに、新たな朱雀が2名合流してきた。叢雲刹那と赤沢奏音である。

「なにやってるの、二人とも!?」

「天竜の実力を測るところだ」

焦った様子の奏音に、覚悟を決めた様子の前川が答える。


一方、天竜院透子は少しやる気が出てきていた。

(赤沢奏音といったか……? ちらっと見たが、凄まじい炎だった。正確な実力を我が主に報告しなければいけない。……そちらはいいのだが)

問題はもう一人の方である。

(叢雲刹那……。我が主が負傷した際のスペアパーツになるとはいえ、主の高貴なる遺伝子を弄んだことは許しがたい……)

……許しがたいのだが……。


(器量良し……っ)

器量が良いのである。

(我が主は既に宇宙一麗しいが……、あと数年もすると……、なんというか、雌の本能を刺激する感じになるのか……?)

実は肉食の天竜様のテンションが上がってしまった。

「ちょっと!! うちの刹那を変な目で見ないでくれる!?」

「……本物の主のお側で仕える私が、どうして紛い物に色目を使う必要がある? ……あと数年待てばいい話だ」

「……色目、まで言ってないし、最後ちょろっと本音出てるし、あのエロい人、苦手」

両陣営の女性エースが(口喧嘩で)激突する。


「奏音。余裕を持ち過ぎだ。あの天竜は、ファイアオークどもよりよほど……!」

刹那の言葉を遮るように、天竜院透子の腰から出る9本の光の帯……【九尾】が数本、迫ってくる。

「短気な天竜様だな!!」

床から吹き上がる前川の火柱セカンドハンターが九尾を防ぐ。

「っ!?」

しかし、九尾の一本が火柱の横をすり抜けて、前川の左手首に巻き付く。

「84式、巻姫」

凄まじい勢いで縮む九尾に、前川の巨体が引っこ抜かれて、引っ張られる。


「舐めるなよ!」

横っ飛びの格好で引っ張られながらも、前川は掌を天竜に向ける。

火柱セカンドハンター!」

本来、地面から上空に吹き上げる火柱を、掌から天竜に向けて水平に発射し……。

「!」

発射しようとしたところに、眼前からも九尾が迫ってくる。


「41式:圧搾工程」


前川の手首に巻き付き引っ張る1本の九尾と、逆方向から迫ってきた3本の九尾。

4本の九尾にすりつぶされるような形となった前川の身体から、風船が割れるような音がした。


「……平時ではエース級なのだろうが……。我が主の時代はすでに終末標準ラグナロクスタンダードが前提の世代だ。実力不足は深刻だな……」

朱雀のエリート兵を瞬殺しておきながら(死んではいないが)、むしろ悲しそうな顔をする女子高生は、異様な強者感があった。


「あ、あの、エロい人、やばくない!?」

「……想像以上だ……」

「二人とも、距離を取れ! 俺が時間を稼ぐ!」

黒木が着火ファイアで足に火を纏い、滑るような高速移動を始める。


「っ!」

だが、動き始めて数メートルも動かないうちに、逆さ吊りで空中に持ち上げられた。

「な……?」

いつの間にか、右足に九尾が巻き付いている。


「分からんな……」

「な……なに……?」

「時間を稼ぎたいほど命が惜しいなら、なぜ天竜の前になど立つ?」

戦闘開始から一歩も動いていない天竜院透子が、魔王のような迫力で告げる。


「我が主ですら私を仕留めるために危険を冒したというのに……。雑魚ならせめて命をかけて見せろ」

魔王というか、悪魔である。


「四十……。まあいいか」

発動しようとした天竜院奥義をやめ、黒木の身体を九尾で2・3回空中で回して、壁に向けて投げつけた。

部屋が揺れるほどの勢いで壁に叩きつけられた黒木は、そのまま動かなくなった。


「ね……ねぇ、刹那? ひょっとして、私達、死ぬ?」

「澄空悠斗と闘うためには、あの天竜は避けて通れないが……。俺の命は澄空悠斗のために使うんだ。前座にくれてやるわけにはいかない」

「…………。私は、澄空悠斗にだって、刹那の命をくれてやるつもりはないんだけど」

奏音の銃を抜くような手の動きに合わせて、戦輪の炎が出現する。


「シュート!」

ミニスカートをひるがえした豪快な後ろ回し蹴りが、天竜に向かって炎を飛ばす。

……だが、ひょいっと避けられた。


「あ……あれ?」

「避けるということは九尾でも防げない炎なのか……。凄いな……」

「でも避けられると意味なくない?」

「接近して、直接、戦輪の炎で攻撃すれば勝機はあるぞ」

「……私の命も、あのエロい人にくれてやる気はないんだけど……!?」

揉め始める朱雀二人。

一方、天竜院透子は攻撃するでもなく二人を眺めていた。


「とりあえず謝れば許してくれそうじゃない……? 黒木と前川の犠牲で、エロい人が超危険人物だということは分かったし」

「攻略の糸口くらいはないと困るんだよ。やつを排除しないと澄空悠斗と闘えない」

「アレを見て、まだ澄空悠斗に執念を燃やす刹那って、本当に凄いと思うよ。けど、刹那のために命を投げ出すほど、まだ私の好感度は高くないんだけど……」

「接近するのは俺だ。赤沢の命を賭ける必要はない」

刹那が、自分の銃を出現させる。

ついでに奏音の好感度が上がった(60/100)。

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