野外での夕食
38
俺たちはドワーフ島へ向けて馬車を走らせていた。
「なあ!歩かないか!!」
ユガイは依然として徒歩移動だ。俺がユガイだったら今頃、心がぐちゃぐちゃになって泣きそうになっているだろう。
「オルビス、ドワーフ島へはどのように・・」
「まずはエルフィデスを抜けて北上します。その後ラリフィスを通り、海岸です。そこから船に乗り換えてドワーフ島へ向かいます!」
「船・・・ですか・・」
俺は船に数回しか乗ったことがない。これまで酔ったことはないが少し心配だ。
「安心してください!船は結構な数が就航してます!」
「・・・・・わかりました」
話を終わらせた。
平和だ。
馬車の隣からなんか声が聞こえるがそれは気のせいだ。俺は寝ようとしていた。
「オルビス・・・、馬車を・・お願いします・・」
「任せてください!!」
俺は寝入りした。
◇
話し声が聞こえる。
目を開けた。
「おはようございます!戒様!」
「おはよう!」
木々が生い茂っている周囲はすっかり暗くなり、光源は目の前にある焚き火だけだった。
「これは・・?」
「俺から説明しよう!今はラリフィスだ。長い道のりだったがオルビスと俺が頑張ったおかげで辿り着いた!」
「ありがとうございます!」
「戒様、ご飯を食べますか?」
「・・・はい」
俺が寝ている間、食料も調達していたようだ。感謝しかない。ていうか・・申し訳ない。
旅の道中のご飯は肉だった。味付けはなさそうだが、素材の味を楽しむとする。
「このお肉!なんの肉かわかりますか?戒様?」
「・・・・熊とかですか?」
「ブッブー!違います〜!!正解は・・・狼です!!」
「・・狼」
俺は前に魔法の練習で使った狼を思い出した。天国に行っただろうか・・
「美味しいですね・・・!」
「肉は体にいい!!たくさん食べたら最高だ!!」
「ユガイの言う通りです!たくさん食べましょう!なくなったらまた狩ればいいですのでね!!」
俺は夕食中、ギルドで見たウサギらしき生物について話そうとしたがやめた。めんどくさいことには関わらない。それがモットーだ。
俺はたらふく食べた。オルビスもたらふく食べていた。ユガイは食べすぎて死にそうになっていた。
「じゃあ・・寝ましょうか!」
俺たちは寝る準備を始めた。ユガイは依然として死にそうだった。
「見張りは・・私がやります!」
ユガイにやらせればいいものの、1人歩いていた姿を知っているオルビスの優しさなのか見張りを引き受けていた。
「あの・・・水場って・・・」
「水場ですか?それでしたら!狩りの最中、小川がありましたよ!あっちです!」
オルビスは森を指した。
俺は歯ブラシを持って向かった。川の水は汚いかもしれないがまあ・・・自然を信じる。
そこへ行ってみると川があった。しかし俺がイメージしていた“小川”ではなく日本で例えるならば荒川の浅瀬、世界でいうならアマゾン川の浅いバージョンだった。
これまで触れてこなかったがもちろんアバもいる。移動の際、アバは馬車の上、テントっぽいものの上にいたのだ。そこでも大きくなったり小さくなったりしていた。アバの中のブームなようだ。ユガイにはアバはちょっと特殊な生物だと言ったらすぐに納得してもらえた。さすが・・・・脳筋だ。
「アバ」
「どうしたのじゃ?」
「ウサギ・・・知ってますか?」
「ウサギ・・・・?」
「2足歩行で歩くウサギです」
「ちょっと待つのじゃ・・・心当たりがある。あれは・・・勇者が来た時だったな・・?」
「勇者?」
「そう、お前たちではない勇者、我を封印した勇者じゃ」
「初代・・」
「その時にウサギっぽい生き物がパーティーにいたような気がするのじゃ・・・」
「ありがとうございます」
どうやら俺が見たのは幻でもなく現らしい。
アバだったら万が一漏れてもオルビスだけだ。俺は大丈夫だと判断した。俺は人にこのことを共有したかったのだ。興味がめんどくさいを上回ってしまった。・・しょうがないことだ。
では聞いたところで歯磨きをした。
上に広がる星が浮かぶ満天の空を見たかったが草木が邪魔だった。
『スノウズ』
俺は慎重にはなった。狙った場所に移動する。そして雪の重みで折れた枝をそっとキャッチしそこら辺に捨てた。
これを繰り返した。
すると川の周囲だけ空が見えるようになっていた。
「綺麗じゃ・・・!」
「綺麗ですね・・・・!」
日本ではすることもできなかった満点の空の下での歯磨き。俺はその時、異世界にきて良かったな〜〜、そう思った。
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