村長
27話
「この人間…このままだと死ぬぞ」
俺はオルビスの脈を触った。
脈はなかった。
「どうすればいいんですか!アバさん」
「アバがやったことだからアバが全部悪い」
「アバは責任を感じてる…なのじゃが…こればっかりはアバにはどうしようもできんのじゃ」
「オルビスさん…」
「このオルビスという人間が自力で“死の国”から抜け出す必要があるのじゃ…いや…それしか方法がない…というべきじゃろうか」
「…オルビスさん!起きてください!」
「オルビスさん!」
目が少し動いた。
「オルビスさん!」
「人間!頑張るのじゃ!」
オルビスの手が動いた。
「オルビスさん!!」
オルビスの目がゆっくり開いた。
する突然起き上がった。しかしまだアバの魔力が体の中にかなり残っているのだろう。立てずに体勢を崩してしまっていた。
「ママ…パパ…」
「…………っ!」
目を覚ました開口1番目の言葉がそれだった。
俺は少し驚いてしまった。
オルビスが前に俺に言ってくれていた、「両親を亡くした」という言葉と今のオルビスの言葉、オルビスはアバが言っていた“死の世界”で両親にあったのだろう。
オルビスは泣き始めた。号泣した。
「ママぁぁぁぁぁ…パパぁぁぁぁぁ」
「…どこに………いるの…っ」
胸が張り裂けそうになった。しかし俺は湧き上がる感情を抑えた。
「大丈夫です…オルビスさん…」
俺はそっと頭を撫でた。それが少しでもオルビスのためになるんだったらと俺は思った。
オルビスはその後小1時間泣いた。
その後、オルビスは泣き疲れた子供のように眠ってしまった。
こんなオルビスは初めて見た。これまで感情をあまり顔に出さない人だった。
しかしこれは全く違う姿だ。
これが素の姿なのかもしれない。
「泣いて…しまったな」
「はい…そうですね…アバさん」
「人間…名前はなんじゃ」
「広井…戒ですけど…」
「広井…アバを連れていってくれないか…」
「………え?」
「アバがオルビスをこのような状態にした張本人じゃ…。さらに…広井…そしてオルビスが今のような危険な場所に巻き込まれる可能性は大いにある。アバは大精霊じゃから、強い。まあ…お主らを傷つけた時点でわしにはそんなことを言う権利もクソもないのじゃが…」
「本当は…お主たちに詫びと恩返しがしたい…のじゃ」
「………オルビスさんに聞いてください…でも一旦まずは一緒に来てもいいです…」
「ありがとう…広井」
そうして俺はオルビスを担ぎながらアバを連れて村に帰った。
◇
俺たちがつくなり村中が大騒ぎだった。
最初は霧が消えたということに対しての称賛の声が大きかったが、すぐに俺たちの状態の話題に変わった。
俺はオルビスを担いでマセルさんの家に行き、2階にある俺たちが泊まっていた場所にあるベッドにそっと運んだ。
一休みするために1階に降りた。
「……なんか…食べる?」
マセルさんが控えめに言ってきた。
オルビスをおぶってきた俺を心配してのことだろう。
「いただきます」
そういう時マセルさんはよそよそしくキッチンの方に向かっていった。
マセルさんはすぐに戻ってきた。すぐといっても8〜9分待っただろうか。
「簡単なものだけど…スープ持ってきたよ」
マセルさんは俺の前にそれを置いた。
俺はそっとそれを口に運んだ。
暖かく、霧で冷えた体にとってはありがたかった。
その時ドアのノックオンが聞こえた。
「村長じゃ」
「村長……」
マセルさんの顔が明らかに強張った。
マセルさんがどこかの夕食で言っていた話を思い出した。“村長”が冒険者を霧の調査のために呼ぼうとしなかった、という話を。
「扉を開けてくれませんかね」
マセルさんは渋々体を上げた。
そうしてドアを開けた。
外には野次馬がある1人の周りにできていた。この人が村長だろう。
「冒険者殿…きてくれませぬか…」
マセルさんは俺に向けて申し訳なさそうな顔をしていた。
「…はい…このスープを飲んだら行きます」
俺はできる限りゆっくりスープを飲んだ。料理番組によくある味見のように飲んだ。その間に去ってくれることを望んだ。
そうしても飲み終わってしまった。
村長はまだいた。
「やっと飲み終えましたか、ではきてください」
「マセルさん…オルビスさんに何かあったらお願いします」
「任せて…大丈夫だよ」
返事を聞き、俺は仕方なく村長についていった。
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