オルビス
26話
「広井…様……」
オルビスは落ちた。
アバの魔力が体全体に行き渡ったのだ。
たとえ、このような他者の魔力によって生まれた“魔力が濃い場所”に入っても長時間は入らなければ体に問題はない。さらに、1〜2日入ったとしてもその時点で体の力が弱まり、すぐに人は出ていく。
しかし、オルビスたちは違った。依頼を抱えており、体全体に他者の魔力がまわってしまうまで留まってしまった。さらにオルビスはAランク冒険者で騎士をしている為、通常の冒険者と比べても筋肉がついている。よってさらに自らに対しての危機感が湧きにくかったのだ。
「ここは…どこです…?」
「オルビス」
「………え…?」
「パパとママだ」
「…………………え……?……な…なん……で…」
「母上と…父上…がいるんですか……」
「オルビス!昔みたいに“パパ”って読んでくれてもいいんだぞ!はっはっはっは!!」
「…パパ………どうして…」
「オルビスも…成長したな」
「うん……うん、パパァ〜ァ!」
「泣くな泣くな、オルビス」
「パパ…」
「そうですよ、オルビス」
「…ママ……」
「ごめんなさい!!パパとママの……さい…ご…に…いなくて…」
「オルビス…ありがとな。俺たちのことをこんなに思ってくれて」
「ありがとうね、オルビス」
「オルビス…俺たちもお前に謝らなきゃいけないことがある」
「…パパ…何が…」
「すまない!オルビス…お前を1人にさせて!」
「ごめんなさいね…お母さん…死んでしまって…」
「お前は…人一倍優しい子だ…。すまない!」
「パパ………」
「なあ…オルビス…俺たちがいない世界…いや…あれからの世界でお前はしっかり生きているか」
「無理だよ……そんなの無理だよ…ママとパパがいなくなった世界で私は…」
「そうですか……、見えていた通りでしたか…オルビス、しっかり生きなさい」
「そうだ、オルビス、自立しなきゃならん!」
「そんなの無理だよ…パパ!ママ!」
「オルビスが行きたいように生きる、それが1番のパパとママへの供養なんだ。オルビス」
「私の行きたいように生きてるもん!今だって…今だって…」
「オルビス…あなたの心は今、殻がついてるんです。“私たちの死に立ち会えなかった後悔”という固い殻が。それがついたのは…私たちの責任です。しかし…それは私たちには割れない。それを割るのは…オルビス…あなたしかいないんです」
「………………オ…ル…ビ……ス……さん…」
「オ………ル…………ビス……さん」
「オルビス…いく時だ…」
「心配されてしまう」
「そんなの無理だよ……」
「ずっとこうやって…ずっと幸せに…行きたいよ!」
「オルビス…行きなさい」
「これ以上いるとお前は本当に死んでしまう。それは父さん、母さんも悲しいんだ」
「そして…何よりもお前を心配している人を悲しませてはいけない」
「パパ…」
「あなたが殻を割れなくても…いつか…きっと…目の前にそれをこじ開けてくれる…ヒビを入れてくれる…そんな存在に巡り会うんです…母さんには分かります」
「ママ…」
「…でも…」
「オルビス!幸せは続かない、辛いことも続かない。お前はいつかきっと俺たちが霞んでしまうような…大切な人を見つける…父さんと母さんもそうして出会ったんだ!まあ…オルビス…俺たちはどこかでお前を見守っている。だから…安心して行くんだ…」
「………わかったよって言いたくないけど…パパとママのために…行くよ」
「ありがとうね…オルビス」
「ありがとう…オルビス」
オルビスは声が聞こえていたドアの前に立った。
「絶対だよ……パパ…ママ…バイバイ」
オルビスは足を動かそうとした。
だが動かなかった。
「ねぇ……体がここから離れるのを…」
「そうか…オルビス」
「押してあげようか…母さん」
「そうですね…父さん」
オルビスの、小さく、しかしどこか頼もしい背中を押した。
「オルビス!「「元気でな・元気でね」」」
オルビスは歩き始めた。
最初は歩きだったがだんだんと速くなっていった。
「パパ…!ママ…!」
「私…叶えるよ!私…頑張るよ!!」
自分の気持ちが変わらないうちに、大切な親の思いに応えるため。
後ろを振り返ってしまうと足がまた止まってしまう。
オルビスは走った。
必死に走った。
涙で前が見えなかった。
そうして1つのドアにたどり着いた。
「オル………ビスさん!」
さっきの声よりも大きくなっていた。
その声は“広井戒”の声だった。
「広井…様…今行きます…」
その言葉を聞いたオルビスはゆっくりとドアを開けた。
この後結構話が進んできます。
次の投稿はいつかは分かりません。




