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GOOD LUCK〜十秒だけは異世界最強  作者: 染谷秋文
アトランティス誕生
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六十七、魔法陣と獣車

 


「というわけで、ケンタウロス族には引き続き捉えた魔獣達の飼育及び調教を頼む。

 強い魔獣を手懐けられればアトランティスの戦力及び輓馬不足の回復、場合によっては輓馬の輸出による財政確保及び、国家間の連携協定に繋がる可能性もある。

 それとーーー、アオイの言う、“魔獣の家畜化”が成功すれば民の食糧難を回避する事もでき、安定して美味い肉が入手可能になれば食堂や酒場も更に繁盛することになるだろう」


 現在、建設中の屋敷内部、その地下に確保された会議室にてアトランティスの定例会議が行われている。

 これからアトランティスを発展させて行く上で必要な話し合いが行われ、その議題の一つとして、カナタの提案した魔獣の家畜化が挙げられていた。

 元より、その為にカグラによってアトランティスへ呼ばれたケンタウロス族の長、シソクは当然と言わんばかりに頷き答え、ゼノスからの要請を受諾。


 これにより、アトランティスでは本格的に魔獣の家畜化が進められようとしていた。


 だがーーー、やはりこれには反対意見もあるようで、定例会議に出席したバロン有数の貴族、スフィアスが大声を上げる。


「輓獣の輸出だと!?ならん。ならんぞゼノス!この妖精の大森林(フェアリーガーデン)に住まう強力な魔獣達は他国に対する重要な抑止力の一つ。

 それを大量に捕らえ、そして輓獣として他国に流そうなど、貴様は正気か!?

 密猟を防ぐために、これまでどれだけの騎士達が時間を費やして来たと思っておる!?」


 広大な森に住まう魔獣達は何も食料の為だけでは無く、他国の大規模な侵攻を妨げる大きな要因にもなっている。

 大規模な軍を率いてバロンを侵略しようとすれば、大量の、そして強力な魔物達と対峙することとなり、バロンに到達する前に大きな痛手を負うこととなるのだ。

 バロンの防衛都市を謳っておきながら、重要な戦力を大量に捕らえ周辺国家に流すなど、正気の沙汰では無いとこの件に関してはスフィアスだけではなく、これまで多くの貴族から反対の意見が上がっていたのだった。


 先の王都崩壊事件の際、いち早く国外へ逃亡し、誰よりも遅く戻ったスフィアスはこの話を聞いて激怒。

 怒りを露わにし、口を開こうとしたゼノスを遮るように続ける。


「それにケンタウロス族の里は、自分達で育てた魔獣を真神教に利用され壊滅的な被害を受けたと言うではないか。

 カグラ姫や例の黒髮の子供に何を言われたかは知らんが、貴様らはまた同じ過ちを犯す気か?」



 ここ最近のカナタの活躍は当然耳に入ってはいるものの、何処の馬の骨とも知れぬ正体不明の青年が、防衛都市立ち上げの中心に居座り、この都市でも有数の大きさとなるであろう屋敷を建築しようとしている。

 控え目に言って、スフィアスから見たカナタは目障りなガキなのだ。


 ゼノスは、何度も他の貴族にした話を再びしなければならぬのかと、溜息を飲み込むようにして口を開く。


「場合によってはと言った筈だ。公爵、我等は何もバロンの戦力をただ他国に流そうなどとは考えておらん。

 それに見合った対価を得られるならばという話をしたまでだ。

 それにケンタウロス族の育てた魔獣が敵の手に堕ちたことなど、此れだけの者が集まるこの場で検討していない訳がなかろう。

 魔獣の家畜化が行われるのは死の穴の九十九階層。

 迷路内で唯一の森林地帯だ。

 まず、家畜化される魔獣の多くは妖精の大森林(フェアリーガーデン)ではなく、死の穴内部で調達する。

 元より穴倉に篭っている魔物を使うのだから、他国からの侵攻に対する抑止力を失うことはない。

 次に、家畜が敵に利用される心配についてだが、これだけ多くの魔物を有する森に囲まれていれば、家畜など居てもいなくても、敵には関係ない。

 事実として、今回の王都襲撃に使われた魔物達は家畜でも何でもないのだからな。

 仮に戦力として強く育てた魔獣が逃げ出したり敵に操られては事だが、九十九階層の森林地帯ーーー、“セルヴァ”であれば、そう簡単に魔獣が逃げ出すことは無く、何より魔獣の飼育が行われる現場は、アオイや多くの魔道士の力によりセルヴァ内にて巧妙に隠されている。

 特に問題はない筈だ」


「フッ、何を自慢気に言うかと思えば、死の穴九十九階層だと?

 確かに魔獣の地上への脱走は防げるかもしれんが、そんな場所で育てた魔獣の肉をどうやってこの地上へ運ぼうと言うのだ。

 まさかこの忙しい時に、食料運搬の度に六獣騎士やAランク冒険者でも使うつもりか?

 肉が腐らぬよう魔獣を生きた状態で地上へ運ぶつもりなのだろうが、大量の魔獣を逃さぬよう率き連れて地上へ戻るのに一体何日かかる?

 そもそも、九十九階層と言えば、死の穴でも最下層に近い、強力な魔物達の巣窟。

 そんな場所で肉の飼育を行うなど不可能に決まっているだろう。

 その飼育場を維持する為には、死の穴最下層で生き抜ける実力者を、最低でも数名は常に配備し、警護に当たらせることが必要になるのではないか?


 全く・・馬鹿馬鹿しすぎて話にならん」


 どう考えても毎日九十九階層から魔獣を運び続けることなど不可能だろう。

 スフィアスは想像していたよりも遥かに幼稚な計画をゼノス達が企てていることを悟ると、嘲笑するように周囲に座る貴族、一人一人に視線を飛ばす。


 だが、スフィアスから視線を向けられた貴族達はと言えば、視線を伏せる者や苦笑いを浮かべる者ばかり。

 スフィアスの言動には賛同し兼ねると言っているような表情を浮かべたのだ。


 スフィアスは、どういう理由かとゼノスへ振り返える。


「そういえば、公爵はまだ知らんのか。

 確かに今までであれば、最下層から此処まで食料の運搬をするのは不可能だっただろう。

 だが、開かずの扉が開けられた今、状況は大きく変わっているのだ」


「・・・・・どういう意味だ?」


 公爵は表情を一転させ、怪訝な顔でゼノスを問いただす。


「開かずの扉が開かれ崩れ去ったのは知っているな?

 その後、扉のあった場所を抜けた先で、ある魔法陣が発見されたのだ」


「扉の先に魔法陣・・?それが一体なんだと言うのだ?」


「魔法陣の正体は、“転移魔法陣”。

 今は失われた太古の技術により作られた古代魔法陣《エンシェント・ヒエログリフ》。それが見つかったのだ。

 当初は何の魔法陣なのか誰にも分からぬままだったが、側に浮かびあがった見知らぬ文字をアオイが解析したことで、その使用法が明らかとなった」


「黒髪の子供が・・?」


「うむ。開かずの扉を開けた張本人にしか読めんような仕掛けか、全く別の理由か・・・、それは分からぬが何にせよ、転移魔法陣が現れたことで九十九階層からの物資の運搬が可能となったのだ」


「なんと・・・っ、だが、転移魔法陣などあっては神徒が現れた時、いいように利用される恐れもあるのでは・・・っ!」


「それは魔獣の飼育とは別の問題だろう。

 転移魔法陣はどちらにしても既に現れているのだからな。

 一応、魔法陣を使うにはいくつか条件もある。

 一度“百七階層”へ到達した者ーー、つまり古代魔法陣を跨いだ者であること。

 そして、ある呪文を唱えること。

 つまり、その呪文を知っていることだ。

 魔法陣によって転移する先は地上の死の穴入り口の真横、つまりこの屋敷のすぐ側で、地上から百六階層と百七階層の境にある魔法陣へ飛ぶことも可能だ。

 条件を満たさぬ者は例え条件を満たす者と共に魔法陣に乗っても転移することは出来ず取り残されることになる」


「まっ待て、それでは九十九階層で飼育した魔獣をどうやって地上に転移させるのだ!?

 呪文を唱えなければならぬのなら、魔獣は転移出来ないということだ。

 それに、距離が大幅に短くなるとは言え、九十九階層から百六階層の最奥地まで魔獣を引き連れ進むなど正気ではない!

 引き連れた魔獣を守りつつ最下層の魔獣に襲われ続ければ、必ず多くの犠牲者が出るぞ!そんなことを許すわけにはーーーー」


「確かに最下層付近の魔獣は危険だが、九十九階層から百五階層までは他の階層程の距離は無い。

 農場から百五階層まではアオイやニケ、そして多くの魔道士が協力して直通の道を作り上げ、魔獣が入りこまぬよう通路には高純度の輝晶による魔獣除けが施されている他、交代で見張りも配置している。

 百六階層に関しては壊れぬ壁面の性質に邪魔をされ道を繋げることは出来ないが、それを利用して街を作っている最中だ。

 百六階層は広く、百五階と百七階層に続く道以外に出入り口は無い。

 つまり、一度魔物を排除してしまえば、出入り口を見張っている限り魔物が入り込む余地は皆無。

 鉄壁の街を作ることも可能というわけだ。


 街を作る上で排除した魔物は農場で調教して輓獣や騎獣、それが不可能であれば食料にすることとし、街にはバロンの騎士達の訓練所及び駐屯所、百六階層へ到達した冒険者向けの宿屋や酒場を作る予定となっている。


 公爵の気にする魔獣が魔法陣を通過できぬという問題だが、それに関しても既に解決済みだ。

 ーーー生きているから通過出来ない、ならば方法は一つ。

 農場から百六階層の街の手前までは直通の通路を使って移動し、百六階層の街にて魔獣を屠殺後、精肉。

 そして魔法陣にて肉を地上へ運ぶ。


 農場の護衛と見張りについてはケンタウロス族の他に、死の穴を住処とする“ユノ”という名の妖精族に協力を依頼している。

 ユノはアオイやグランの知人で、ネオとも面識のある実力者だ。


 今のところ問題があるとすれば、輓獣や騎獣として使役する魔獣の場合には転移魔法陣が使えないこと、そして死の穴の外で捕まえた魔獣を調教する時に同じ問題が発生することくらいのものだ」


 一通りの説明を終えたゼノスに、スフィアスは何か付け入る隙が無いかを探るように、顎に手を置いて考えるが、暫くして静かに腕を組み押し黙ってしまう。

 ゼノスはそれを確認すると、次の議題に移るべく口を開く。


「では引き続き迷宮下層の問題について話し合うとしよう。

 転移魔法陣の先で百七階層への道を塞ぐように現れた氷の扉についてだがーーーーー」




 **********





 死の穴への入り口ーーー、その側に建設中の屋敷の眼下に広がる広大な庭。

 そこに一台の大きな獣車が止まっている。

 獣車に気取った飾り付けなどは施されておらず、至って普通の商人が使っていそうな、古ぼけた印象の見た目だ。


 ミアやレオ達の正体を隠した旅ということもあり、あえて質素な見た目の獣車となってはいるものの、やはり聖獣ミアを乗せる獣車というだけはあり、その内装には携わった職人達の拘りが見て取れる。

 物資が不足する中、可能な限り高級な生地を使ったのだろうと推測出来る柔らかな深緑の座席は扉の部分を除き内部をグルりと一周しており、人族の成人男性であれば十人程度は余裕を持って座ることが出来るであろう。

 荷を積むとすれば座席に囲まれた中央のスペースということになるだろうが、カナタが旅に同行するということもあり、積荷についてはそれほど考慮されていないようだ。


 獣車に乗り込むカナタ達を見送るのはゼノスとロウレン、カナタの屋敷の建設に携わっている一ツ目鬼族(サイクロプス)のギュスターブ、そして商人トトと猫耳ソフィーのみ。

 アトランティスに住む多くの住民達の信頼を獲得しているカナタ達ではあるが、正体を隠した旅ということもあり、騒ぎにならぬよう密やかに屋敷を出立することとなった。

 何より、建設中の屋敷に住む謎の強者がアトランティスを離れたことが周囲に知られてしまっては元も子もない。


「というかなんでカグラまで乗ってんだ?」


「なんでとはなんじゃ。妾も行くからに決まっておろうが」


「決まっておろうがってーーー、アトランティスはどうすんだよ!?

 というか、俺の屋敷は!?カグラが住んでくれるな

 ら安心だと思ってたんだけど!?」


「妾の務めは果たしたと申したであろう。一先ずアトランティスは大丈夫じゃし、屋敷はゼノスに任せておけば良い。

 それよりも妾には重大な使命が残されておる

 」


「重大なーーー使命?」


「お主らが気にする必要はないし、妾がお主らの旅に口出しすることも無い。

 どうせ同行するのも途中までじゃしな。

 ホレ行くぞ、シロ」


 陽も出ておらずまだ薄暗い早朝の森の中、一頭のエンシェントユニコーンによって引かれる大きな獣車は、静かに出立したーーー。




 ********



「凄いのです!!」


「だにゃ〜」


「確かにこれは揺れが少ない」


 出立して数分、シロに牽引され凸凹の山道を進む獣車。

 通常の獣車と比べ、臀部に伝わる衝撃が遥かに少ないことに、レオ達三獣士、そしてカグラは驚きの表情を見せ、それ見たカナタは自慢気な表情をしたかと思えば直ぐに何かを考え込みブツブツと呟きだす。


 これは白猫商会の営業マンとしてカナタが各地に売り込むべき商品の一つであり、トトや職人達と共に開発に力を入れた獣車でもあるからだ。


 揺れを軽減する為、カナタが提案したサスペンションをトトや職人達と共に試行錯誤して様々なタイプの物を作っては直し、漸く完成したのがバネとバネの減衰装置からなる簡潔な構造のサスペンション。

 そして、白猫商会お抱えの錬金術師が色々な金属の調合を試し、パーツ毎に適した物を作り上げ、それらを組み立て、やっとの思いで完成させたのだ。


 そしてその努力がこうして実際に報われ、乗車した物を驚かせている。


 だというのに、何故かカナタは浮かない顔をしていた。


「うぅん、確かに試作で初めて乗った獣車と較べれば随分マシだが、やっぱどう考えても揺れ過ぎだ」


 激しく揺れる通常の獣車しか知らぬレオ達からすれば、このサスペンション搭載型獣車の乗り心地は良いのだろうが、日本で生活していたカナタにとって、この獣車の乗り心地は到底良いと言えるものではなかった。


 性能の違うサスペンション、舗装された路面、そしてーーー。


「タイヤか・・・・・。

 こっちの獣車の車輪は木製。

 ゴムの中に空気を入れたタイヤと違って、衝撃が直で伝わってくるのがこの不快さの要因だ。

 道を綺麗に舗装するのは無理でもタイヤならなんとかーーー。

 いや、だけどこれほど道が悪いとゴムのタイヤなんて直ぐにパンクして・・・というかそもそもゴムなんてどこにある?

 物質変化で丈夫な金属をゴム質に変化させることは可能だが、それだと全ての獣車のタイヤを俺が作ることになる。

 魔法やケモミミで溢れるこの世界で、ひたすらタイヤを作る仕事につくなんてまっぴらゴメンだ。

 やっぱ、車輪と車体の間に繰り返し使えるタイプの風魔法の魔法陣を仕込んで、突風で浮かせる方法を取るべきだったか?

 いやいやいや、だけど、そんな突風を生み出す魔法陣を移動中ずっと発動しておける奴なんて滅多にいないだろうし、移動中にマナを使い果たしちまえば魔物に襲われた時、即死だ。


 待てよ・・・、ならタイヤの内側に風魔法の魔法陣を仕込んで、マナを込めるとタイヤに空気が入るシステムにすればいいんじゃないか?

 だけど確か繰り返し使えるタイプの魔法陣を作るにはかなり時間がーーーーーーー」




「カナタの奴、また訳わかんねぇことをブツブツ言ってやがるぜ」


「出発したばかりだというのに、しようのない奴じゃ」


「一人の世界に入ってるな。暫くそっとしておこう」


「ん、それがいい」




 一行を乗せた獣車は、強者の集う国、大国セイロンを目指し、薄暗い森を直走るーーー。




 ***********





 蒼井 奏多


 特級魔法

 不落之果実(インビジブル・タイム)

 物質変化(マテリアル・チェンジ)



 ーーーーーー



 グラン・イプシロン

 種族 血聖竜鬼《ヴァンパイアホーリードラゴン》


 特級魔法

 血族之王(ブラッディクラウン)



 ーーーーーーー



 アステリオス

 種族

 不禅夜叉


 特級魔法

 不破雷火


 ーーーーー


 ミア


 種族

 白雷牙猫(ホワイトライガー)の妖精猫族(ケット・シー)


 特級魔法

 白雷絶唱


 ーーーーーー


 レオ

 獅子の妖精猫族


 特級魔法

 獅子舞闘



 ーーーー


 ニケ

 妖仙猫(ハーミットキャット)の妖精猫族


 特級魔法

 大地の化身(パペットアース)


 ーーー



 ネオ


 雲豹(ネオフェリスネブロサ)の妖精猫族


 特級魔法

 風雲童子





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