↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された無能令嬢、魔界で最強の王となる  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/56

第7話

 セラーナのすぐ左側――階段の下、列の先頭にいた魔族が口を開いた。

 黒髪を長く伸ばした、端正な顔立ちの男性。


 抑揚を落とした威厳を湛え、声は響いた。

「魔王護衛軍ゼクス。こちらに揃っております。新たなる魔王様へご挨拶願いたく存じます」


 セラーナの頭が真っ白になった。

「えっ……あの……」


 言葉が続かない。

 魔王?

 私が?


 左端の黒髪ロングの男性が、わずかに間を置いて顔を上げた。

「魔王護衛軍ゼクス統括、ヴェルドラント・ノワール。魔王様の剣となり盾となります。どうぞご命令を」


 隣、黒髪をオールバックに整えた眼鏡の男性。

 冷徹な印象の目が、動かずセラーナを射抜くように見据える。

「魔王護衛軍参謀、エリークス・グランスト。戦略および魔導技術全般を担います」


 次、褐色の肌に金髪を短く切り揃えた逞しい体躯の男性。

 声は、落ち着いた響き。

「魔王護衛軍補給軍団長、ライアン・デザートウィンド。兵站、資源、交易を預かります」


 続いて、赤髪を長めに伸ばした筋骨隆々の巨漢。

 肩幅が広く、鎧の下でも筋肉の隆起がわかる。

「魔王護衛軍本隊軍団長、ガルガンド・フレイムヘイスト。戦争の荒事は俺に任せてください」


 最後に、セラーナを抱きしめて転移させた少年。

 瞳を上げ、無邪気に口角を上げた。

「魔王偵察軍団長、リオ・シャドウ。潜入、諜報、暗殺、何でもやります」


 ヴェルドラントが声を潜めて付け加えた。

「本来であれば、もう一人――魔王護衛軍特殊部隊長、シグフレッド・ヴァイスがここに控えているはずでございます。しかし、最終決戦の混乱の中で消息を絶ち、今も行方不明となっております」


 五人全員が、再び頭を下げた。


 セラーナは玉座の間の頂に立ち、呆然と彼らを見下ろしていた。

(私……魔王? どうして……?)


 魔素の濃密な空気が、体の中を満たしていく。

 ずっと待ち焦がれていた何かが、ようやく帰ってきたかのように。


 セラーナは、足音を忍ばせて玉座に近づいた。

 指先が、冷たい石の肘掛けに触れる。


 セラーナは息を潜めて玉座に腰を下ろした。

 冷たい石の感触が背中に染み込み、この座が自分のものだったかのように、体が自然と収まった。


 その瞬間――


 視界が歪み、頭の奥で激しい痛みが走った。


 記憶が、嵐のように流れ込んできた。

 先代魔王の記憶だった。


 彼の名はレヴァンティン。

 戦闘狂だった。


 生きるために、倒さねばならない。

 奪わねばならない。


 弱者は滅び、強者だけが新しい世界を切り開く。

 それが彼の信条だった。


 人間も魔族も、すべてを力でねじ伏せれば、誰もが跪き、誰もが従い、その先に「新しい世界」が見えると信じていた。


 だから彼は宣言した。

「俺は新しい世界を見てみたい」


 その言葉は、穏やかだった。

 しかし、その裏にあったのは、血塗れの野望だった。


 倒して、奪って、支配して――そうすることでしか、彼は「新しい世界」を想像できなかった。


 戦争は果てしなく続き、魔族は忠誠を尽くし、人間は恐れ、聖女を立て、勇者を送り込んだ。


 レヴァンティンは最期、勇者の剣に貫かれながら呟いた。

「……次の私は……もっと強く……もっと遠くまで……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。