第51話
ヴァレリアは魔力の流れを分析した。
「……自己形成を、単一の個としてではなく、集団で個として認識させているのか。だとすると、この墓地全ての魔核を共有し、破壊しない限り再生し続ける……悪趣味が過ぎるぞ!」
冷たく吐き捨てた言葉に、墓地の闇がわずかに震えた。
二人の後ろでは、白と黒の光が激しく交差していた。
ドラゴンの青白い炎が、エリークスの外套を弾く。
外套は生き物のように広がり、炎を喰らい、黒い炎を返した。
エリークスは両手に黒炎を宿し、ドラゴンの翼を穿つ。
ドラゴンは翼に魔力を内包し、空へ浮上しようとする。
だが、その魔力をエリークスの黒炎が貪り始め、翼が萎んでいく。
地面に落ちかけた巨体を、外套が拳の形となって叩きつける。
ゴオオオオン!
だが、ドラゴンの炎がそれを阻害し、翼はすぐに回復。
また浮き始める。
人類を逸脱した攻防戦――互いの力が拮抗し、墓地全体が震え、墓石が粉々に砕け散っていた。
エリークスは呟いた。
「貴様のような穢れた器で、尊き魂を冒涜するなど……許さん」
ドラゴンの咆哮が、それに応えるように響いた。
その瞬間――墓地全体が、息を止めるような白い光に包まれた。
光は最初、墓石の隙間から、土の奥から、滲み出すように湧き上がった。
柔らかく、長い夜の果てに訪れた朝の光のように、すべてを優しく照らし出す。
腐った土が浄化され、歪んだ空気が澄み渡る。
光は墓地の隅々まで広がり、闇を押し退け、冷たい石畳を温かく染めていった。
ヴァレリアと対峙していた異形の魔獣たちが、まず動きを止めた。
鋼の鱗が音を立てて剥がれ、ねじれた肉体が内側から崩れ落ちる。
翼は灰のように散り、複数の頭部が同時に絶命したように沈黙した。
再生の黒い霧が、光に触れた途端に蒸発していく。
魔獣たちは抵抗すら許されず、土に還るように倒れ伏した。
セラーナは言葉を失った。
「……暖かい」
光は彼女の肌を優しく撫で、胸の奥に染み込むような温かさを運んできた。
魂の叫びが聞こえていた頭の痛みが、ふっと和らぐ。
誰かが長い苦しみを終わらせてくれたような――安らかな温もりだった。
巨大なドラゴンの咆哮も途切れた。
青白い炎が弱々しく揺らぎ、翼の動きが鈍くなる。
無数の魂の叫びが、悲鳴ではなく安らかな溜息へと変わっていく。
ティムフダルグはドラゴンの背から這い上がり、血まみれの顔で叫んだ。
「これは……清浄の光!? そんな馬鹿な……一体誰が勝手に起動した!?」
エリークスは外套を刃の形へ変えた。
黒い布が鋭く伸び、ドラゴンの首を正確に狙う。




