第50話
ヴァレリアはセラーナを背に守り、迫る異形の魔獣たちを睨みつけた。
七体――いや、八体か。
翼を生やしたもの、鋼の鱗をまとったもの、複数の頭部がねじれ合ったもの。
どれもが、かつての魔族の亡骸を無理やり縫い合わせ、歪んだ姿に変えられた怪物だった。
最初の一体が動いた。
地面を蹴り、鋸状の角を振りかぶって突進してくる。
ヴァレリアは短剣を逆手に持ち替えた。
「魔王様、私の後ろに!」
告げると同時に、彼女は横薙ぎに刃を振るった。
ズシャアアッ!
角が根元から斬り飛ばされ、巨体が横倒しになる。
だが、切り口から黒い霧が噴き出し、散らばった肉片がジワジワと集まり始めた。
傷が塞がり、鱗がより厚く、硬く再生していく。
他の魔獣たちも一斉に動き出す。
点だった攻撃が、面へと変わっていく。
空から降下する翼持ちの二体が爪を振り下ろし、地面の四体が左右から挟み撃ちに。
隙のない連携――一つの生き物のように、互いの動きを補い合い、逃げ道を塞いでいく。
ヴァレリアは炎と氷の双刃槍を再び呼び出し、連続で突き刺す。
槍が通るたび、魔獣の体が爆ぜ、灰のように散る。
だが、散った肉片は再び集まり修復される。
それどころか、破壊された部位がより強固に、鋭く再生していく。
爪は長くなり、鱗は厚さを増し、動きは速くなる。
ヴァレリアは分析した。
「アンデッドに魔族の脳を埋め込むことで、隙のない連携を生ませているのか……。それに破壊するたびに強化されていく……一撃で葬るしかないが……」
彼女はちらりと、セラーナの顔を見た。
青ざめた頰、震える唇。
それでも、セラーナはヴァレリアを信じる瞳で、見つめ返していた。
ヴァレリアの胸に、熱いものが込み上げる。
「ここまでの屈辱……勇者戦以来だ!」
歯を食いしばり、声に怒りを乗せて叫んだ。
セラーナは力強く言った。
「私のことは気にせず好きにやって!」
ヴァレリアの目が力強く輝いた。
「心配をおかけして申し訳ありません。押し通ります!」
瞬間――ヴァレリアの速度が一段階上がった。
ドゴンッ!
一度の動作で二つの打撃音が響くほどの速さ。
短剣が残光を引いて閃き、槍が炎と氷の軌跡を残す。
空から降下する翼持ちの一体を、ヴァレリアは地面を蹴って迎撃。
槍の炎側を突き刺し、爆発的に焼き払う。
着地と同時に、横から迫る二体を短剣で両断。
さらに空へ飛び上がり――空からの攻撃よりも速く。
破壊した一体の巨体を足場にし、もう一体の頭部を槍で貫く。
落下の勢いを活かし、地面に叩きつける。
ギャゴオオオアン!
衝撃波が墓地を薙ぎ、残りの魔獣たちが地に伏せた。
魔核を砕く感触が、確かにヴァレリアの手に伝わっていた。
「魔核は砕いたはずだ……」
だが――ジワジワと、破壊された部位が集まり始める。




