第41話
爆音で目が覚めた瞬間、部屋の窓ガラスがびりびりと震え、遠くで炎が夜空を染めていた。
セラーナは上半身を起こし、身を固くした。
ヴァレリアはすでに立ち上がっていた。
裸足で冷たい石の床を踏みしめ、腰に短剣を差したまま、セラーナの軽鎧を手に取っている。
その動きには無駄もなく、いつでも戦える態勢が整っていた。
「……今のは?」
セラーナは尋ねた。
ヴァレリアは素早く近づき、軽鎧を着せながら答える。
「魔力の波動からすると、英雄級の魔法だと思われます」
留め具が手際よく締められていく。
セラーナは窓の外に視線をやり、炎の残光が揺れる夜空を見つめた。
「場所は?」
「恐らく、金狼の牙のクランハウスでしょう」
セラーナの胸が締めつけられた。
バルドの笑顔、クランハウスの女性たち――昨日の同盟の記憶が蘇る。
「急がなくては……」
ヴァレリアは最後の留め具を締め終え、セラーナの前に跪いて視線を合わせた。
その瞳は揺るがず、しかし優しさを湛えていた。
「いえ、作戦通り魔族の救出を優先します」
「でも……バルドたちは?」
「魔王様。彼らはルクスヴァルトの精鋭です。生き延びます。それより――とてつもない量の魔力反応が発生しています」
セラーナの眉が寄る。
「どういうこと?」
ヴァレリアは立ち上がり、窓の外の闇を見据えた。
「場所は墓地から。つまり、我々の敵でしょう」
セラーナの胸の奥に決意が灯った。
「分かりました。そちらに向かいましょう」
彼女はベッドサイドのテーブルから黒薔薇の杖を手に取り、強く握りしめた。
杖の花弁がわずかに青紫の光を放ち、魔力が渦を巻き始める。
同時に、胸元の銀のアミュレットを軽く触れた。
ヴァレリアは満足げに頷き、セラーナの横に控えた。
「はい。魔王様の御心のままに」
二人は部屋を飛び出し、要塞の闇へと溶け込んでいった。
遠くで炎が揺らめき、墓地の土が盛り上がる気配が、夜の空気を重く染めていた。




