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第40話
一方、ガルドリム要塞の墓地。
墓守担当の衛兵は、眠気眼をこすりながら松明を掲げて巡回していた。
夜風が冷たく、どこか腐ったような匂いが鼻を突く。
いつものように静かな墓地のはずだった。
だが――異変に気づいた。
墓が掘り返されていた。
土が均等に盛り上げられ、墓石がわずかに傾いている。
何かが内側から押し上げたかのように。
「……なんだ、これは?」
衛兵は松明を近づけ、足元の土を慎重に観察した。
ふと、すぐ横の新鮮な墓土がわずかに盛り上がった気がした。
――気のせいか?
次の瞬間、黒ずんだ、腐りかけた指がぬっと土を掻き分けて伸びてきた。
衛兵の息が止まる。
腐った手が土を掴み、続いて腕、肩――濡れた土を落としながら、死体が這い上がろうとしていた。
「う、うわあああっ!?」
衛兵が後ずさるより早く、遠くで轟音が響き、炎が夜空を染めた。
煙が立ち上り、要塞の闇を不気味に照らす。
衛兵は震える手で松明を握りしめ、呟いた。
「いったい……なんだんだ……」
墓地の土が、次々と盛り上がり始めた。
無数の腐った手が、夜の闇に伸びていく。
要塞全体が死者の息吹に包まれようとしていた。




