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追放された無能令嬢、魔界で最強の王となる  作者: 川合 佑樹


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第39話

 夜が深まり、ガルドリム要塞の石畳は冷たい闇に沈んでいた。


 遠くの酒場の灯りもほとんど消えかけている。


 金狼の牙のクランハウスの前に、一人の人影が立っていた。


 深紅の法衣をまとったエリトラーゼ。


 彼女は魔導書を片手に開き、唇をわずかに歪めて夜の闇を見据えた。

「紅蓮よ。慈悲すら許さず、すべてを無に帰せ『インフェルノ・ラグナロク』」


 詠唱が終わると同時に、彼女の右手から灼熱の魔力が迸った。


 炎の奔流が渦を巻き、クランハウスの重厚な門を直撃する。


 ドゴオオオオン!!


 轟音とともに門が粉砕され、炎の余波が石壁を焦がしながら内側へと侵入した。


 扉の前まで火の手が迫るが、魔素の濃密な空気がそれをわずかに押し返し、完全な破壊には至らない。


 エリトラーゼは魔導書を軽く閉じ、鼻を鳴らした。

「変な家ね。魔素が濃いせいで威力が制限されちゃったわ」


 彼女は歩を進め、炎の残光に照らされた瓦礫を踏み越えていく。


 その瞳には、冷ややかな興味と、確かな殺意が宿っていた。


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