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追放された無能令嬢、魔界で最強の王となる  作者: 川合 佑樹


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第33話

 馬車はガルドリムの冒険者ギルドの前で止まった。


 石畳の広場に面した建物は、黒い岩肌を基調としながらも、磨き上げられた木材と金属の装飾が施され、威厳を湛えていた。


 ドルガンの酒場のような荒々しさはなく、むしろ整然とした美しさがあった。


 全員が馬車から降り、バルドが先頭を歩き始めた。

 金狼の牙のメンバーが自然に続き、セラーナとヴァレリアはその後ろに控える。


 扉を開けると、中は広々とした空間が広がっていた。


 左手には酒場エリア、右手には宿の受付カウンター、そして奥に依頼掲示板と正式な受付窓口が併設されている。


 冒険者たちがテーブルを囲み、酒を片手に談笑する声が響くが、ドルガンのような下品な喧騒はなかった。


 バルドが入るなり、ギルド内がざわついた。

「おい、金狼じゃねーか」

「また仲間増やしたのか?」

「相変わらず派手な奴らだな」


 視線が一斉に集まる中、バルドは軽く手を振って挨拶を返すだけで、受付カウンターまで堂々と進んだ。


 受付に立っていたのは、銀髪をポニーテールにまとめた若い女性だった。

 制服の胸元にギルドの紋章が輝き、笑顔は丁寧で洗練されている。


「お帰りなさいませ、バルド様。本日はどのようなご用件で?」


 バルドはカウンターに肘をついた。

「ただいま、リリア。依頼達成の報告と、素材の買取だ。ボルグはいるか?」


 リリアと呼ばれた受付嬢は、すぐに帳簿を確認しながら軽く首を傾げた。

「ええ、本日解体所にいらっしゃいます」


「報告を済ませたら向かう。連絡しておいてくれ。冷蔵庫もフル稼働させておけよ。今回は驚くぞ?」


 リリアは小さく笑みを浮かべ、メモを取った。

「畏まりました。では二階へ」


 バルドは軽く手を振って二階へと上がっていった。

 階段を上る背中は、このギルドの主のように堂々としていた。


 金狼の牙の他のメンバーは、自然に酒場エリアのテーブルに腰を下ろした。


 レギオンはフードを被ったまま、ガルガムは巨躯を椅子に預け、フィオナは小さく欠伸をしている。


 セラーナとヴァレリアは、バルドの後を追うでもなく、受付カウンターへと向かった。


 受付カウンターの前で、ヴァレリアは尋ねた。

「魔族狩りの依頼はあるか?」


 リリアは、表情一つ変えずに穏やかな笑顔を浮かべた。

「はい、ございます。お二人は金狼の牙の新規クランメンバーの方でいらっしゃいますか?」


「いや、俺はフリーだ。ギルド証は持っている」


 ヴァレリアはメイド服の胸元から、古びた銀のドッグタグを取り出した。


 瞬間、ギルド内がざわついた。

「おい、あれって……」

「シルバー等級だと?」

「金狼め、どこであんな即戦力を拾ってきたんだ……」


 リリアは丁寧に手を差し出し、タグを受け取った。

「拝見いたします」


 鑑定機にタグを通すと、淡い青い光が走り、すぐに認証音が鳴った。

「確認が取れました。ありがとうございます。お連れの方は?」


「必要ない。依頼は俺が受ける」


「畏まりました。ではこちらがリストになります」


 リリアはカウンターの下から、数枚の羊皮紙を取り出し、整然と並べた。


 そこには、年齢、性別、特徴部位、そしてそれに伴う大体の値段が、事務的に記されていた。

 ――十~十五歳 女性 赤い瞳 五千金貨


 セラーナはその一行を目にした瞬間、唇を噛んだ。

 視界の端が熱くなり、胸の奥に冷たい怒りが広がるのを感じた。


 ヴァレリアはリストを一瞥し、呟いた。

「ずいぶん細かいな」


「依頼を出されている方が多いので、ご要望も細かくなっております」


「ドルガンからの道すがら、一体も見かけなかったな。大分狩られているみたいだ。ヴェルディアからの依頼が多いのか? 鮮度はどれくらい必要だ?」


 リリアは首を振った。

「いえ、ほとんどが城塞内依頼となっております。本国では別で依頼が出ていますので、鮮度はそこまで気になさらなくて問題ありません」


「分かった。魔族を見つけたら持ってくるよ」


「お待ちしております」


 ヴァレリアはリストを巻き直し、リリアに返した。


 その背後で、セラーナは視線を伏せ、震える指をドレスの裾に隠した。


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