第23話
黒岩の前哨に訪れてから約一ヶ月が経っていた。
黒岩の前哨は、かつての焼け跡とは別物の姿を取り戻しつつあった。
ガルガンドが率いる本隊の兵士たちが昼夜を問わず働いた結果、崩れた石壁は簡易ながらも頑丈に修復され、廃墟だった広場には共同炊事場が作られた。
夜になると、魔族の子供たちの笑い声が響き、焚き火の明かりが家族の輪を照らすようになった。
ライアンが確立した物資補給ルートのおかげで、食料と医薬品は途切れることなく届き、さらには魔族の商人さえ、警戒しながらも交易に訪れるようになった。
魔族が安全に暮らせる、最初のモデル地域。
それでも、多くがヴェルディアへと拉致され、目下脅威にさらされている事実は変わらなかった。
セラーナは玉座に座したまま、告げた。
「ヴェルディアへ向かうわ」
玉座の間は静寂に包まれた。
跪いていたヴェルドラントが顔を上げ、進言した。
「では、黒岩の前哨から最も近いヴェルディア占領下の村――ドルガンを、まず視察なさってはいかがでしょうか。そこで現状をご確認いただき、次の手を決めるのが宜しいかと」
セラーナは首を縦に振った。
「そうね……その村へ行きましょう」
立ち上がったセラーナの横に、ヴァレリアが控えた。
「魔王様、今回は私だけでよろしいでしょうか」
ヴァレリアが尋ねた。
セラーナは少し考えて、穏やかに唇を曲げた。
「ええ。今回はヴァレリアだけでいいわ。リオには黒岩の物資搬入とインフラ整備を任せているから、今は離れられないもの。城の守りはリオにお願いするわ」




