第21話
広場には、セラーナ、ヴァレリア、そしてエギルだけが残った。
エギルは領域が消えたことを体感し、即座に呟く。
「ライトニング・オーバードライブ」
ババババババババヂヂヂヂッ
体から溢れるほどの電気が迸り、筋肉が膨張する。
青白い雷光が鎧を覆い、速度と力が飛躍的に上がる。
続けて、ヴァレリアに向かって三つの魔法を放った。
「スロウ・カース! ウィークネス・フィールド! ブラインド・ミスト!」
ギュヴァアアオンッ
速度低下、防御力低下、感覚鈍化――三つの呪いがヴァレリアを包む。
エギルが笑う。
「女は戦場で男に尻振っときゃいいんだよぉ」
雷をまとった拳がヴァレリアを襲う。
しかし、その拳は届かなかった。
ヴァレリアの体がわずかに硬直した。
「……っ!」
歯を食いしばり、視界が揺らぐ。
それでも、彼女は動いた。
行動阻害の呪いをものともせず、エギルの速度を圧倒的に上回った。
拳が空を切り、エギルの顔面が露わになる。
(嘘だろ……俺は英雄だぞ……嫌だ……死……そんな……)
ドゴオオオオオオオッ!
ヴァレリアの拳が先にエギルの顔面を撃ち抜いた。
衝撃が頭蓋を貫き、エギルは地面に叩きつけられる。
体が硬直し、雷光が散って消えた。
英雄は、ただ横たわるだけになった。
静寂が訪れた。
ヴァレリアはセラーナの方へ振り返った。
右の拳を高く突き上げ、笑みを浮かべた。
それは勝利の証であり、忠誠の証でもあった。
セラーナは小さく頷き、リオと共に近づいてきた。
リオは無邪気な笑みを浮かべたまま、ヴァレリアの隣に並ぶ。
セラーナは倒れて動かないエギルを見下ろした。
「……あなたも、誰かを守りたかっただけかもしれません。でも、この方法は間違っています」
その声は、怒りでもなく、憐れみでもなく、ただ静かな確信に満ちていた。




