第13話
武器庫の重厚な扉を開けると、壁一面に剣、槍、杖、鎧が掛けられていた。
ヴァレリアは慣れた手つきで奥へ進み、セラーナの前に立ち止まった。
「では参りましょうか」
セラーナは小さく頷き、ヴァレリアに促されるまま背を向けた。
服の紐を解かれ、藍色のドレスが音もなく床に落ちる。
冷たい空気が肌に触れた瞬間、思わず肩が震えたが、ヴァレリアは無言で黒い軽装備を差し出した。
黒い革を基調とした軽鎧は、見た目は豪華で動きやすそうだった。
胸元と肩に銀の装飾が施され、腰回りは動きを妨げないように細かく分割されている。
ヴァレリアが手際よく装着していく。
「これは……必要?」
セラーナは少し恥ずかしそうに呟いた。
「傘下国とはいえ、実質敵軍の支配下にあります。何かあっては困ります」
ヴァレリアの声は穏やかだが、どこか揺るがぬ響きがあった。
最後に腰帯を締め上げると、彼女は棚から一本の杖を取り出した。
長い棒の先端に、人とも魔物ともつかない頭蓋骨があしらわれた禍々しいものだった。
セラーナは思わず顔をしかめた。
ヴァレリアはそれを見て、すぐに察した。
「……少々大きいようなので、こちらはどうでしょう」
代わりに差し出されたのは、黒い薔薇が繊細に絡みつく杖だった。
花弁の一枚一枚が魔力を帯びて微かに光り、茎の部分は漆黒の金属で補強されている。
セラーナの目が思わず輝きを宿した。
「……とても綺麗ね」
「黒薔薇のヴェロニカが三十年かけて作り上げた逸品でございます」
ヴァレリアは控えめに口元をほぐした。
その名を口にしたとき、どこか敬意が込められているのがわかった。
「なんだか……すごそうね」
「その杖は魔力の行使領域の侵食を可能にします」
セラーナは首を傾げた。
「どういうことかしら?」
「外で試してみましょうか」




