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エピローグ アナザーストーリー 佐反兄弟 

2014年4月初め。

ブルーグレーのJ.PRESSのストライプスーツ姿の俺は

東京大学工学部の編入学生オリエンテーションに参加していた。


ただし佐反凱としてではなく、

真里谷流を継ぐことになった“真里谷凱”としてだが。


そして

俺がここに立っている理由は、

特別に頭が良かったからでも、

血の滲むような努力をしたからでもない。


ただ――

構造を理解できた。

それだけだ。


2012年のインテル国際学生科学フェアでの最優秀賞。

「入試ロンダリング」と揶揄されることもある、

編入試験の科目数の少なさ。

そして、アメリカからの帰国後も英語力を落とさず、

常時TOEIC960点台を維持できていたこと。


これらの条件が噛み合って導き出された、

ひとつの最適解。


最小限の努力で、

最大限のリターンを回収する。


その結果として選ばれたのが、

東大工学部への編入だった――

ただ、それだけの話だ。


もっとも、

この場所を「終点」だとは思っていない。


秋には、カーネギーメロン大学への

編入学が決まっている。


彼らが俺を誘ってくれたのは、俺がスピリチュアルに多い

主観重視でなく、再現性重視なタイプだったからだ。


だがそれまでの間、

どこかの大学に籍を置いておく必要があった――


中国の思想家・孟子は、

元々、葬式の泣き女の真似をする子供だったという。


それを見た母親が、学校の隣に引っ越したところ、

今度は経を読む子供になったと言う。


「学ぶ」は「真似ぶ」から来ている様に、

環境が人に及ぼす影響は大きい。

東大での影響。そして通いやすさ。

それもまた、現実的な理由の一つだった。


海上保安庁に勤務する兄、アギトも、


 「海洋法研究の関係で」

間もなくロシアの大学院へ派遣されるらしい。


あの兄貴のことだ。

きっと、向こうでもイージードライブだろう。


そう思って、

俺は小さく笑った。


そして――

目の前で新編入生への説明を行っている

パープルのシャツ姿の人物に、

俺はふと、視線を止める。


どこかで見た顔。

いや、多分間違いない。


武漢でのゲーム大会で、

俺たち兄弟と一緒に、

サソリを食べた、あの先輩に似ていた。



アナザーストーリー 佐反兄弟編 完



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