7話(改) アナザーストーリー 佐反兄弟
おう、来たか!
研究室では松平先生が、俺たちを歓迎してくれた。
無事に四年へ進級した現代風水研究会の四人――
俺、一条、西園寺、そしてジャギは、揃って松平先生の研究室に所属することになった。
それから紅一点の黒水晶子先輩、
パワースポットツアーで意気投合し、最近付き合いだしたばかりだ。
以前の彼女はフランスへと旅立ち、どうも俺は年上の方が居心地が良い。
先生はもともと、東大の研究室で
「気配」――つまり人間が持つ生体電位の膜、準静電界について研究していたらしい。
例えば、犬が四十メートル離れた家人の帰宅を察し、
玄関で待つのも、
ウツボが砂の下三十センチに潜む獲物を探り当てるのも、
生体電位を感知するセンサーの働きだという。
そうした研究を続ける中で、
先生は楢崎流風水に辿り着いた。
自然界に存在する静電気が、
人間の行動や判断にどのような影響を及ぼすのか。
そして、それがミトコンドリアの電位と、どう結びついているのか。
その問いは、
武漢以降、俺たち兄弟に起きている変化――
換骨奪胎の正体と、完全に重なっていた。
俺は、その変化を測るための指標として、
アメリカ・モンロー研究所のヘミシンク瞑想で用いられる
「フォーカス理論」に注目している。
外的刺激が、精神状態や体感をどのレベルに引き上げるか。
それを段階的に整理した理論だ。
これを楢崎流風水に落とし込むことで、
俺の中では、変化の正体が
生理学的にも一本の線として繋がり始めていた。
結論から言えば――
今の俺の身体には、他の生物のDNAが入り込んでいる。
それは自然に存在するものではない。
何か明確な目的のために、生み出されたものだ。
分かりやすい例が、体重だ。
身長百八十二センチ。
見た目はどう見ても七十五キロ前後。
だが実測値は、九十五キロ。
(パンチの威力がそれだけで桁違いだ。)
構造的に捉えるなら、
体細胞がフラクタル化していると考えるのが、一番しっくりくる。
そうであれば、
俺の細胞が半導体のように振る舞い、
ミトコンドリアが生み出す電位エネルギーが
常識外れになるのも、説明がつく。
握力は一般的な計測器では測定不能。
心拍数は安静時で三十前後。
二月に出場した青梅マラソン十キロでは、
余裕を残したままコースレコードを更新した。
それでも、疲労はほとんど残らない。
どうやら俺の身体では、
疲労物質――乳酸すら分解されているらしい。
つまり、
俺と兄は、人でない何かに
すり替わってしまっている。
そう考えた方が、話は早い。
思い当たる節は一つしかなかった。
武漢市の薬膳料理店で食べた、
酒で酔わせた――
ジャイアント・デス・ストーカー。
あれ以外に、説明はつかない。




