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4話 アナザーストーリー 佐反兄弟


親父が、シンガポールへの出張から帰ってきた。


ガレージに停めてあった俺のバイクを見て、

親父は一瞬、懐かしそうな顔をした。


そのサイドカーは、

親父の友人――真里谷先生の息子が、

かつて乗っていたものだと言う。


その息子さんは、

二〇〇一年のニューヨーク同時多発テロで亡くなっている。


先生はそれ以降、

彼のクルマとバイクを、ずっと手放さずにいたらしい。


毎日、エンジンを掛ける。

ほんの少しだけ動かす。

それを、日課として続けていたという。


そして――

今、俺たちが住んでいるこの家も、

もともとは、その親父の友人の家だった。


少し間を置いてから、

親父は付け足すように言った。


先生は、大学で生物学を教えていた人で、

猫を好きになる寄生虫の研究をしていたらしい。


だからなのかもしれない。

兄貴と俺を見て、

親父と、自分の息子の姿を、

どこかで重ねていたのだろう。



翌日、初登校。

程よい色落ちのリーバイスの501にブルーのブルックスブラサーズのポロカラーシャツ。スニーカーは白のスタンスミス。

マムートのタンレザーのデイパックを背負う。

自慢じゃ無いが、ジーパンを切らずに履けることで周囲から羨ましがられたりする。


ウチからJR国立駅まで数分。

そこから終点の高尾で京王線に乗り換える。

家を出てから校門までは大体四十五分。

ただ、敷地が広く、結局、三年の教室までは

そこからさらに数分歩くことになる。


校舎は国立高専らしく、

どこも同じ基準で建てられた、

古くて、変わり映えのしない建物が並んでいる。


俺の受け入れ先は、以前と変わらず電気工学科だった。


クラスの雰囲気は予想通りだ。

オタクと、一匹狼を気取る連中に、

きれいに分かれている。


一匹狼の方は、俺と同じく、

何らかの理由で上位の公立高校へ行けなかった口だろう。

――わかりやすい。


昼休み、意外にも話しかけてくる奴らがいた。


どうやら俺は、

ゲーマーの間では少しは知られた存在らしい。

それに“サソリ”という苗字も、

厨二連中にはそれなりに刺さるようだ。


「残念ながら、“一条武丸”じゃないけどな」


自虐気味にそう自己紹介したのが、一条武。

チェックのシャツにバンダナを頭に巻いたその風貌は

まあ確かに、どう見ても凶暴そうには見えない。


もう一人のぽっちゃりメガネの方は西園寺望というらしい。


俺が、

「ここは高専の学習院か?」

と聞くと、二人は笑って言った。


「俺たち、元々は四国出身なんだ」


信長の野望に出てこない歴史には詳しくないが、

四国には、公家の荘園を管理していた分家が、

武士として土着し、

その子孫たちが今も暮らす集落がある――

そんな話を、どこかで聞いたことがある。



学食で彼らと並び、

毎日これでもいいと思えるくらい――

コクのあるよく煮込まれたカレーを食べながら、

シケプリ対策でちょうど良いサークルなんかないかと聞いてみる。


ああ、それなら、ウチの先生が主催する“現代風水研究会”ってのがある。


「なんだい、その胡散臭そうなサークルは?

呪術か暗殺術の研究でもするのか?」と聞くと


因みに俺たちもそのメンバーなんだ。

西園寺は、カレーを口に運びながら言った。







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