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プロローグ アナザーストーリー 佐反兄弟 


世の中には、

学校に行きたくないと部屋に閉じこもっている連中がいるらしい。


正直に言えば、

彼らが甘えているのか、本当に追い詰められているのか、

俺には分からない。


ただ――

俺のこれまでを見せたら、

少しくらいは頭が冷えるんじゃないか、とは思う。


うちの親父は国土交通省に勤める技官だ。

しかも、転勤の多い部類で、

引っ越しは日常、別れは前提。

「腰を落ち着ける」という発想自体が、最初からなかった。


中学二年の秋、

俺はアメリカから日本に帰ってきた。


だが半年もしないうちに、

今度は東北へ転校だ。


当然、内申点なんて足りるはずもなく、

希望していた高校には進めなかった。

落ち着いた先は、地元の高専。


五年制。

これでようやく、

親の転勤に振り回されずに済む――

そう思ったのも束の間、

二年後には、俺はまた転校することになる。


東北震災。


住んでいた母の実家は、

原発事故による避難勧告エリアに指定された。


そして、

二〇一一年五月。


震災特例として、

俺は東京高専の三年への転入を認められた。


アメリカから帰国してすぐ、

親父は新宿内藤町――新宿御苑に面したマンションを、

いわゆる官僚価格で購入していた。


だが、そのマンションに住めたのは半年だけだ。

新宿御苑の年間パスポートを購入したのも束の間、

すぐに東北への転勤が決まり、

マンションは賃貸に出された。


二年後、

今度は親父自身のガンが見つかる。


その一年後、

東京への転勤内示が出た直後に、

東北震災が起きた。


次の職場は、

立川市にある海上保安庁の試験研究センター。

マンションのローンは、

保険のガン特約で消えた。


そこで親父は、

国立駅から徒歩八分ほどの場所に、敷地90坪、建物45坪ほどの

中古住宅を購入して、高級官僚らしからぬ自転車通勤をしている。


親父なりに、

これまで振り回してきた息子たちに、

何か残そうとしたのだと思う。


ちなみに四つ離れた兄は、

今は広島の学校にいる。

帰省時間が三時間以上短くなると聞いて、

大いに歓迎していた。


新居の隣は、

京都の嵯峨野みたいな、

大きな竹藪に囲まれた古い屋敷。


通称――

「お化け屋敷」。


だが、

そのお化け屋敷の住人こそが、

俺の人生を変えることになる。


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