10-13 友の人としての強さと夏のひととき
次の日。
駿は結と共に、お父さんが運転する車に揺られていた
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目的は山の方にある祖父母の家で、景色が徐々に緑が中心になっていく。
田んぼ。
山々。
夏空の下で揺れる木々。
見ているだけでも癒されたような気分になる。
窓の外を眺めていると、お父さんが前を向いたまま口を開く。
「美生ちゃんが泊まる件なんだけど、今月は来週の月曜日泊まることになった」
「来週の月曜日!分かりました」
結の声が弾み、嬉しそうにしているのが伝わってくる。
「分かった」
とりあえず、それだけ言ったが、正直なんて返せばいいのか分からなかった。
同時に、曖昧な気持ちが胸の奥に残る。
そんななか、スマホを取り出し、直己とのトーク画面を開く。
『後で話せる?』
すぐに既読が付き、了解というスタンプが送られてきていた。
『ありがとう』
それだけを送って、スマホの画面を閉じた。
(直己のことだから分かってくれると思うけど、なんか複雑だな~)
窓の外へ視線を戻す。
さっきまで綺麗だと思っていた景色が、少しだけ遠く感じた。
祖父母の家に到着すると、二人が笑顔で迎えてくれた。
「駿に結、来てくれてありがとう。孫の元気な顔を見れておじいちゃん、嬉しいよ」
「暑いから、早くお上がり。冷蔵庫にアイスいっぱいあるから、たんとお食べ」
二人らしい歓迎に、思わず笑みが零れる。
家は昔ながらの古民家。
大きな庭。
縁側。
木の匂い。
ここへ来ると、時間の流れが少しゆっくりになる気がする。
「おじいちゃん、おばあちゃん、久しぶり。元気にしてた?」
「元気にしてたよ。前に会った時から一回も風邪引いてないからの」
「そんなこと言って……この前、ぎっくり腰で病院に行ってたじゃないか」
「今はもう大丈夫」
自慢げに話すおじいちゃんを見て、おばあちゃんが呆れる。
そのやり取りを見ていると、自然と安心する。
二人とも元気そうで、それだけで十分だった。
仏壇に手を合わせた後。
直己へ電話を掛けた。
「どうしたんだ、駿?」
開口一番。
「そんなに俺と話しかったのか?」
いつもノリで話しかけてきてくれたので、心が少し軽くなる。
「実は美生の家庭事情で、来週の月曜日、美生が家に泊まりに来ることになった。更に言うと、今後同じような機会が増えると思う……」
一通り話し終えると、少しだけ沈黙が流れた。
「なんだそんなことかよ」
あっさりとした直己の返答に驚く。
「少し複雑なのは確かだけど、それぞれ家庭事情があるのだからしょうがないし、俺がもしも島内さんの親だったら、同じ判断をする」
そして。
「だから、気にすんな!」
その一言が胸に響いた。
直己なら分かってくれると思っていたところもあったけど、不安もあった。
もし嫌な顔をされたらどうしよう。
そんな考えも脳裏に浮かんだ。
だからこそ。
この言葉がありがたかったし、直己の強さを改めて知った気がした。
「ありがとう」
「だけど、島内さんに手を出したら、いくら親友でも許さないからな」
「するわけないだろ」
「絶対にだぞ!」
そこからは夏休みのことなど、他愛のない会話が続いた。
その時間が凄く心地よかった。
電話を終え、スッキリした勢いで、縁側に面した部屋に移動し、寝っ転がる。
これが、祖父母の家に来た時の過ごし方。
部屋にエアコンは無いが、庭を抜けてくる風と静かに響く風鈴の音が気持ちよく、暑さを感じさせない。
「兄さんここに来ると、毎回この部屋で、ごろごろしてるよね」
見上げると、結がアイスを咥えて立っていた。
「いいんじゃん。逆に、結はここに来たら、何してるんだよ?」
「ちょっと、散歩したりとか」
「こんな暑い日に、よく散歩出来るな」
「兄さんとは違いますから」
微笑みながら話した後。
アイスを食べ終えた結はなぜか隣に寝っ転がる。
「なんで!?」
「毎年、兄さんがここで寝転がっているから、そんなに気持ちいいのか気になって」
「まぁ、うるさくしなきゃ、別にいいけど」
「は~い」
こうして、二人で寝そべることになった。
結が近くにいるのは分かるが、静かなひとときが流れる。
そのなかで、風鈴の音だけが響き、遠くで蝉が鳴く。
気づけば意識はゆっくり沈んでいった。
目を覚ますと、西日が庭を照らしていた。
どれくらい寝ていたのだろうと思いながら体を起こし、隣を見てみる。
「すぅ……すぅ……」
結は眠っていた。
気持ち良さそうな寝顔をしていて、思わず笑ってしまう。
「俺より満喫してるじゃん」
結にタオルケットを掛ける。
その時、少し身じろぎしたが、まだ起きなかった。
結局。
結は夕飯の直前まで寝ていた。
この時間になると、ひぐらしの鳴き声が消え、鈴虫の音が聞こえ始めている。
今日はなぜか、心により強く響いた気がした。




