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8-6 2つの負け

 次の日の部活終わり。


 駿は、果奈とのテスト勝負に臨んでいた。


「今日で全部返ってきたね。準備はいい?」


 果奈が少しだけ楽しそうに笑う。


「ばっちり。……駿には負けない気がする」


 その表情に、ほんの少しだけ胸がざわついた。


(……自信ありそうだな)


「じゃあ、いくよ。現文と古典」


 手元の答案を見て、息を整える。


「89点と88点」


「私は75点と70点」


 想定通り。

 ここは取れると思っていた。


「数学はⅡが74点、Bが80点」


「Ⅱが81点、Bが88点」


「……えっ!?」


 思わず声が漏れる。

 じわりと嫌な予感が広がる。


「化学と世界史は79点と85点」


「どっちも90点」


「ほんとに?」


「正々堂々の勝負で嘘つくと思う?」


 少しだけ得意げな顔。


 ――確かに、あの説明は分かりやすかった。


 納得するしかない。


「英語はライティング84点、リスニング83点」


「ライティング77点、リスニング79点」


 ここは取り返した。


「物理、72点」


「81点」


 主要科目だけだったら、僅かに勝っていた。


 だが、今回が期末のテスト、勝負の行方は副教科の結果に託される。


「最後、いくよ」


 静かな声だった。


「技術家庭と保健体育。69点と70点」


 主要科目を優先的にやり、副教科を後回しにした結果がもろに出てしまう。


 これは――きつい。


「私は、77点と80点」


 そこで、すべてが決まった。


 数秒の沈黙。


 そして――


(……負けた)


 小さく息を吐いた。


「副教科が無かったら、勝っていたんだけどな」


「全ての教科を満遍なく勉強しなかった駿が悪い」


 最終的に自分の合計が873点だったのに対して、果奈は合計888点を取り、僅か15点差しかなかった。


「約束通り、お願い聞くよ」


 そう言うと、果奈は一瞬だけ視線を逸らした。


「海の日って空いてる?」


「空いてるけど……それだけ?」


「うん」

「でも、この一日は私に付き合ってもらうから」


「分かった」


 自然と頷いていた。


「楽しみにしてるから」


 その笑顔を見た瞬間、

 負けた悔しさなんて、どうでもよくなっていた。




 翌日。


 午前の部活で、隆二と試合をすることになった。


「隆二と試合するの、久々な気がする」


「大会とテストでバタバタしてたしな」


「……いくぞ」


「ああ」


 試合が始まる。


 前回のランキング戦では心の乱れもあって、勢いで負けそうになった。


 でも、今回は正々堂々と臨む覚悟は出来ていた。


「パン!」


 鋭いサーブ。


 反応はしたが、球威に押される。


 返したボールは甘くなり――


「っ」


 スマッシュで叩き込まれる。


(重い……!)


 テスト休みのブランクのせいなのかもしれない。


 だけど、隆二が放つ球に以前よりも威力があるように感じた。


 次のラリーも続かない。


 追いつけない。


 崩される。


 気づけば、流れは完全に向こうだった。


 結果は――完敗。


 同時に、自分のブランクではなく、隆二の練習の成果なのだと、気付かされた。


 悔しさが込み上げてくる。


 でも、その気持ちを押し殺し、次の部員との試合へと挑む。



 結果的には三勝三敗で全試合を終え、練習が全て終わり、隆二と共に帰路についた。


「今日は隆二に、手も足も出なかった」


「大会の強豪選手のプレーを参考に自分なりに活かしただけで、それ以外はいつも通りにやったつもり」

「浅村が最近、早川と仲良くし過ぎて、気が緩んでるだけじゃないのか?」


「それもあるかもな」


 苦笑する。


「でもさ」


 一歩踏み出す。


「次は負けない」


「お互い様だ」


 隆二が拳を突き出す。


「次の新人戦、俺が上行く」


「望むところだ」


 拳を合わせる。


 その感触が、妙に熱かった。


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