表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/110

7-1 進展とモヤモヤ

 二日後の放課後。


 部活を再開しようとした矢先、テスト一週間前の部活動休止期間が始まった。


 タイミングがいいのか悪いのか。

 駿はこの期間を使って、直己と美生の距離を少しでも縮められたらと考え、自宅での勉強会を提案していた。


 並んで歩く帰り道、直己が急に立ち止まり、深々と頭を下げる。


「誕生日プレゼントも嬉しかったけどさ……それだけじゃなくて、島内さんとの勉強会まで考えてくれて。マジでありがとう」


「そんなに頭下げられても、何も出ないって」


 苦笑しながら返す。


「それに今回は勉強会、ちゃんと教わってもらえよ。毎回どこかで赤点取ってるんだから、今回は回避しろ」


「大丈夫。頭脳明晰な島内さんの指導があれば、赤点なんて概念は消える」


 即答する直己を見て、本当に大丈夫なのかと少し不安になる。


 家に着くと、すでに美生は来ていた。

 机の上には教科書とノートが整然と並び、今すぐ始められる状態だ。


「島内さん、今日はよろしくお願いします。苦手な教科ばっかなんで、たくさん教えてもらうと思いますけど」


「大丈夫。人に教えるのも、勉強になるから」


「だからって、全部任せきりになるなよ」

「分かってるって」


 三人で机を囲み、それぞれ問題を解き始める。


 しばらくすると、直己の手が止まり、美生が自然と隣に寄った。


「ここはね、式をこう整理すると簡単だよ」

「なるほど……次の問題も良い?」

「どれどれ……」


 美生は完全に直己につきっきりだった。


 自分も分からない箇所はあったが、二人の邪魔をしたくなくて、解ける問題から進める。

 それでも限界が来て、意を決して声をかけた。


「直己、一瞬だけ美生に聞いてもいいか?」


「あ、悪い。教え方が分かりやすくてさ。次のとこは自分でやるから」


「じゃあ、駿君。どこ?」


 そう言って、美生がこちらへ身体を寄せてくる。

 直己の隣を離れたその一瞬に、なぜか申し訳なさを覚えた。


 美生の説明は丁寧で、考え方の根本から教えてくれる。

 まるで塾の講師みたいだ、と感心しながら聞いていると、視線を感じた。


 顔を上げると、直己がこちらを見ていた。


「どうした? また分かんないところでもあったのか?」


「……いや、何でもない」


 そう言いながら、直己は目を逸らす。

 ほんの一瞬、笑顔が固まったように見えた。


 気のせいかもしれない。

 けれど、その違和感が、なぜか胸に残った。


 しばらくして結が帰宅し、勉強会はお開きになる。

 直己と一緒に、途中まで帰ることにした。


「今日の勉強会、どうだった?」


「正直、かなり自信ついた。同じような問題が出たら、いける気がする」


 その言葉に、ひとまず安心する。


「それにさ……」


 直己は少し照れたように頭を掻いた。


「勉強教わるうちに、距離も縮まった気がする。テストも頑張るけど……島内さんとも、ちゃんと向き合ってみる」


「その調子だ」


 夕焼けに染まる空の下、直己の言葉はまっすぐだった。


 ――ただ、その背中を見送りながら、

 胸のなかには、さっきの一瞬の表情が、まだ引っかかっていた。


 うまくいっているはずなのに。

 それでも、何かが少しだけ、ずれている気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ