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4-7 チャンス到来

 次の日の朝。


 駿が朝食を食べていると、向かいに座っていた結がふと思い出したように口を開いた。


◆◆◆


「兄さん」


「ん?」


「美生姉さんと買い物でノート買ってきてくれない?」


 その一言で、箸がぴたりと止まった。


「えっ!?今日って美生と買い物に行く日だっけ?」


「はぁ?まさか忘れてたの?」


「はい……」


「はぁぁ……」


 結が呆れたように、大きなため息を吐いた。


「しかも今日、大会前の模擬戦でなかなか部活抜けられないんだよな……」


 今日は代表メンバー同士の実戦形式の練習があり、途中で抜けられる雰囲気ではない。


 すると結が静かに言う。


「仕方ないから、今日は私が行くね」


「部活は大丈夫?」


「顧問の先生に部活を休んでもいいか聞くのは面倒臭いけど、大きな大会も近くにないから、大丈夫」


 結は大丈夫だと言っていたが、長男として結にあまり負担をかけたくないという気持ちが勝り、何か良い方法がないかと考え始める。


 そんな時だった。


 スマートフォンが震え、画面を見ると、直己からLINEが来ていることに気づく。


『新作RPGがやばい!』


 学校で言えばいいだろと思った瞬間、頭の中に一つの案が閃く。


(そうだ、直己に頼んでみよう)


 美生と買い物に行かせたら、何かしらのきっかけに繋がるかもしれないし、直己は写真部だけど、幽霊部員で部活行ってない。


 美生も中学三年の時、俺と直己の三人で受験勉強をよくやっていたから、多分了承してくれると思う。


 そう考えた後。


 すぐに直己へメッセージを送る。


『今日、どうしても部活を抜けられなくて、美生と一緒に買い物に行ってくれるとありがたい』


 続いて、美生にも送る。


『ごめん、美生』

『今日は部活でどうしても抜けられそうにない』

『もし良かったら、代わりに直己と買い物へ行ってもらえない?』



 直己からはなかなか返信が来なかったが、美生から返信が届く。


『私は大丈夫だけど、鈴木君はいいの?』


(確かに……)


 まだ直己は了承していないし、勝手に話を進めるのは良くない。


 だけど。


 ずっと前から美生にアタックするって言って何も進展が無いし、俺も気持ちを告げられない直己を見ているのは親友として辛かった。


 それに。

 

 果奈と付き合う前だけではなく、付き合った後も何度も直己に支えられて来た。


 だから今度は、俺が直己の背中を押したい。


 でも、直己が本気で無理って言うんだったら、仕方ないけど部活を休む方向で行くことにする。


 そこまで考えてから、美生へ返信した。



『もしかしたら、やっぱり俺が行くことになるかもしれない』

『どっちが行くか決まったら、また連絡する』


 美生からすぐに返事が届く。


『分かった。』


 その後ろには、柔らかく笑うスタンプ。


 それに安心したように「了解」のスタンプをこちらも返した。


 スマホをしまうと、結が気になったようにこちらを見てくる。


「なんとかなったから行かなくていいよ」


「は~い、でも、誰が美生姉さんと買い物するの?まさか、美生姉さん1人に全部買い物させる訳ないよね」


「流石にさせないって、なんとか解決したから大丈夫。それに、結は学校生活を満喫する年頃なんだから、そんなこと気にしなくても大丈夫」


「それって、兄さんもそうでしょ…」


「うっ……。」


 思わぬ反撃に言葉を失う。


「でも……ありがとう」


 結が小さな声で話す。


「今、何か言った?」


「何も言ってないです!」


「そんなに強く言わなくても、いいじゃん」


 ドタバタとした朝となったが、なんとか準備を終えて、学校へと向かった。




 教室に着き、席へと向かうと、慌ただしそうに直己が待ち構えていた。

 

「朝のLINEってどういうことだよ~」


「頼む、今日どうしても部活の練習に行かなければならないから、俺の代わりに美生と買い物に行って欲しい」


 申し訳なさそうに手を合わせながら、必死に頼む。


「改めて聞くけど、それって島内さんと二人っきりで買い物に行くってことだよな?」


「まぁ、そういうことになるな」


「まぁ、そういうことになるな、じゃねーよ。そもそも島内さんはいいって言ってたのか?」


「美生はいいって、言ってたよ」


「マジで!?」


「マジ、大丈夫だって、中学生の時はよく話してたでしょ」


「その時はそこまで意識してなかったから普通に話せてたけど、意識し始めてからはまともな会話出来なかったし、今だって、何を話せばいいのか分からない」


「……」


 そう言われると、返す言葉が出てこない。


 実際に、果奈を好きになって、告白し、付き合ってるからこそ、その言葉の重みが伝わってくる。


 だからこそ、俺はゆっくり口を開いた。


「無理だったら無理で最悪、俺が行くけど、ここで逃げたら、いつ美生との距離を縮めるんだ?」 


「それは……」


 直己は言葉を返せず、黙り込んでしまう。


「ごめん、言い過ぎた。俺もそうだったから、直己が戸惑う気持ちも分かる。だけど、何かしら動かなきゃ、ずっとこのままだぞ」


 しばらく沈黙が流れ、直己は深く息を吸った。


 そして、覚悟を決めたように話し始める。


「分かった。俺、行くよ」


「もしも、上手く行かなかったら、俺が出来る限り励ましてやるし、上手く行ったら、一緒に喜んでやるから、自信持って行って来い」


「おうよ、これで徹夜お悩み通話コースになっても、俺は責任取らないからな」


「上等、寝不足覚悟で聞いてやるよ。それじゃ、何買えば良いのか、LINEに送っとく」


 買って欲しい物を送った後、美生に直己が代わりに行ってくれることをLINEで送った。



 直己の横顔を見ると、緊張しているのが分かった。

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