12-2 祝いの言葉と高まる期待
次の日の朝。
目覚まし時計のアラームと共に、目を覚ました駿はいつも通りに部活へ行く準備をしていた。
◆◆◆
身支度を済ませて朝食を取っていると、結が話しかけてくる。
「おはよう、兄さん。誕生日おめでとう」
「おはよう…….ん?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「結、今日って何日?」
「二十三日です。まさか自分の誕生日なのに、分からなかったの?」
「う、うん……」
正直に答えると、結は呆れたように大きくため息をついた。
「兄さんは若いんだから、そういうのをちゃんと自覚していた方がいいですよ。それに、兄さんの誕生日を祝ってくれる人に失礼です」
「気をつけます……」
結からの言葉にぐうの音も出ない。
「気をつけるというより、当たり前のことです。私も美生姉さんと――」
「美生がどうかしたのか?」
「っ!?」
その瞬間、結は目を丸くし、露骨に慌て始める。
「なんでもない、なんでもない。それよりも兄さん部活の時間が迫ってるでしょ。いってらっしゃい」
「いや、まだ時間に余裕あるんだけど」
「そ、そうですか……じゃあ、ごゆっくり」
結は逃げるようにその場を後にした。
(今年も何かしらのプレゼントを用意してくれているんだろうな)
俺に対して冷たいことが多い結だけど、誕生日プレゼントは毎年渡してくれる。
それも適当なものとかではない。
ちゃんと手の込んだプレゼントが多く、時には美生と協力して二人で渡すこともあった。
結からのプレゼントに少しだけ胸を弾ませながら朝食を食べ進めた。
全ての準備が終わり時計を見てみると、家を出るにはまだ早い時間だったので、スマホを眺める。
通知欄には沢山の誕生日を祝うメッセージが送られており、毎年送ってくれる直己と美生からもあった。
だけど、今年は少し違う。
修学旅行実行委員の集まりで再び関わるようになった岸さん。
そして――。
告白して彼女になった果奈。
去年まではなかった二人からのメッセージ。
それだけで、この一年で自分の世界が少し変わったのだと実感し、朝から心が温かくなった。
全てに返信して玄関を出ると、見上げた空はよく晴れており、降り注ぐ日差しがどこか優しく感じ、まるで誕生日を祝ってくれているみたいだった。
部活終わり。
部室で着替えていると、隆二と祐希が話しかけてくる。
「浅村、誕生日おめでとう。せっかくだから、ジュース奢ってやる」
「ありがとう。でも、去年同じじゃなかったか?」
その発言が隆二の気に触る。
「文句があるなら奢らねーぞ」
「なんでもないです……」
ジュースを奢ってくれるだけでも十分嬉しいと、必死に自分に言い聞かせる。
「辰巳先輩、ついでに自分にも奢ってくれてもいいんですよ」
「よし、早速自動販売機に向かうぞ」
「お、おう……」
隆二は祐希の発言に呆れたのか、祐希が居なかったかのように無視をした。
「ちょっと待ってくださいよ!」
祐希は慌てて後を追ってくる。
最終的に、隆二からジュースを奢ってもらっただけではなく、ちゃっかり祐希も奢ってもらい、三人で乾杯して誕生日を祝ってもらった。
その時に飲んだジュースは部活が終わったあとだからなのか、それとも、こうして祝ってもらったからなのか分からないけど、いつも以上に美味しく感じ、身に沁みた。
その夜。
自室でのんびりしていると、果奈から電話がかかってくる。
「いきなり電話をかけてごめんね。今大丈夫?」
「大丈夫、こんな時間にどうしたの?」
「今日会えなかったから、電話越しでもちゃんと声で伝えたいと思って」
どんな言葉が来るかすぐに分かったし、その言葉を求めている自分が居た。
「誕生日おめでとう。駿」
今日は色んな人に言われたし、送られた言葉だった。
家族からも。
友達からも。
その筈なのに、果奈の声で聞くと全く違う気がした。
「ありがとう、果奈の口からその言葉を聞けるのは明日だと思っていたから嬉しい」
「喜んでくれたのなら良かった」
果奈の声から嬉しそうにしているのが伝わってくる。
「それで、明日誕生日プレゼントを渡そうと思っているから、楽しみにしててね」
それだけで、胸の奥が熱くなる。
「果奈からのプレゼントならなんでも大歓迎だよ。明日楽しみにしてる」
「うん」
果奈がどんなプレゼントを差し出してくれるのか想像しながら電話を続ける。
ふと夜空を見てみると、星空と雲が入り混じっていた。




