11-13 仲間との頑張りと彼女の全力
体育祭は順調に進み、休憩前の最後の競技に、駿は参加しようとしていた。
◆◆◆
その競技は、部活動対抗リレー。
得点には一切関係のないイベント競技だが、それぞれの部活が部活ならではの道具をバトンにして走る競技で、毎年大きな盛り上がりを見せる体育祭の名物種目だった。
競技前の準備をしていると、同じく競技に参加する隆二と祐希が話しかけてくる。
「浅村、第一走者だけど、準備出来ているか?」
「出来てる。にしても、第一走者は荷が重い」
「じゃんけんに負けたんだから仕方ないだろ」
「浅村先輩いいスタート期待しています」
「祐希こそ、アンカーでやらかすなよ」
「大丈夫です」
祐希は自信満々に言ったので、やらかした時にどんな表情をするのか少し気になった。
競技発走前。
スタートの準備に着こうとするが、バトンとして持っているテニスラケットが邪魔だった。
テニス部なんだからテニスボールでいいだろと思わなくもないが、サッカーボールを抱えたサッカー部や竹刀を持った剣道部も居る。
それに比べればまだマシかもしれないと、自分に言い聞かせながら前を見据えた。
――パンッ!
ピストルの音が響き渡り、スタートを決める。
走りにくそうなサッカー部を始めとした他の部活を抑えて二番手に躍り出る。
けれど、一番前を走る陸上部には追いつくどころかその差は広まっていく一方だった。
(陸上部だからといって、バトンがそのままバトンは反則だろ……)
心の中で文句を言いながらも次の走者である隆二にラケットを渡そうとする。
「はい!」
隆二は何も言わなくても走り出していた。
長くダブルスを組んできたからか、受け渡しは驚くほど自然だった。
ラケットを持った隆二は勢いに乗り、陸上部との差を大きく縮めるが、惜しくも越せず、次のランナーにラケットを渡した。
そのまま二番手で競技は続き、アンカーの祐希にラケットが繋がれる。
「行けー!祐希」
今は競技としてではなく、共に戦い合う部活のメンバーの一員として、精一杯の声援を送った。
その声援が届いたのか分からないが、祐希は一気の追い上げを見せ、陸上部との差がみるみる縮まっていく。
一歩。
また一歩。
そして、ゴールイン。
最後はゴール前の激戦となったが、ぎりぎりのところで追い越せず、結果は二着で終わった。
けれど同時に、全員が全力を出し切ったこともあり、自然と笑みが零れた。
競技が終わり、隆二と共に祐希の元へと向かう。
「惜しかったけど、よく頑張ったよ。祐希」
「ありがとうございます。これも先輩方がバトンを繋いでくれたお陰です」
「祐希は勿論、浅村もいいバトン渡しだった」
「俺は普通に渡しただけだよ」
「そ、そうか?自然にバトンを受け取れた気がしたんだけどな」
「やっぱ、一番手ダブルスの絆の力は計り知れないですね」
「まぁな」
「お、おう」
隆二は照れ臭そうにしながらも返した。
第一走者という大役として出た部活動対抗リレーで、最初は緊張したけど、終わってみれば、体育祭の思い出の一つとなっていた。
応援席に戻ると、女子の部活動対抗レースが始まろうとしていた。
果奈はバドミントン部のアンカーとして走るのだが――。
(あれ?)
一つの疑問が頭に思い浮かぶ。
アンカーの筈の果奈が、アンカー前の走者のところに並んでいた。
何かしらのトラブルがあってしょうがないとは思ったけど、果奈自身が疲れないか心配だった。
リレーが始まり、果奈の所属するバドミントン部は苦しい展開となり、果奈にバトンが渡る頃には下位グループに沈んでいた。
けれど、果奈にバトンが渡されると、果奈は上位グループに匹敵する走り、いや、それ以上の走りで、次々と他のランナーを抜かした。
「頑張れ!」
気付けば声が出ていた。
周りがそれぞれの部活動に応援していたので、だから今だけは遠慮する必要もなかった。
バトン交換がなかったことも大きく、そのまま勢いに乗った果奈は最終的に四位にバドミントン部を導いた。
順位だけを見れば四位だけど、果奈が後方から次々とランナーを追い越す姿は、一位を与えたいほど、凄かった。
そして午前の競技が終わった体育祭は昼の休憩へと突入する。
待ちに待った果奈のお弁当。
果奈が作ったお弁当は何回も食べたことがあるけど、体育祭の雰囲気のせいか、胸の高鳴りが抑えられなくなっていた。




