11-11 告白の重み
同じ頃。
駿は自室で一人の時間を過ごしていた。
◆◆◆
好きなゲームをやっているのに何故か集中出来なかった。
同時に、頭の中に浮かんでくるのは放課後の実行委員での出来事で、正確には――岸さんのことだった。
『ありがとう』
何気ない一言で、特別なことを言われたわけじゃないのに、妙に引っ掛かる。
まるで、岸さんが必死に感情を押し込めているようにも見えた。
その様子が果奈に告白した時と通ずる部分を感じ、まるで――。
――コンコン。
核心に迫ろうとした時、ドアをノックする音が聞こえてきた。
ドアを開けると、そこにはパジャマ姿の結が居た。
「兄さん、少し話に付き合ってもらってもいいですか?」
いつも俺に対して強気な結だけど、今日は全く感じられない。
声にも表情にも元気がなく、何かあったのだと、一目見ただけで分かり、兄として話に付き合うことにする。
「いいよ」
そう言うと、結は少しだけ安心したような顔をした。
「ありがとう、兄さん」
結を部屋の中へ招き入れると、結はベッドに腰を下ろし、話し始める。
「兄さん、この前の話覚えてる?」
「確か、結が告白されたって話?」
「はい……」
結の返事は弱々しく、表情も重苦しくなり、見ているこっちも切ない気持ちになった。
「告白してきた男子にどう返事をしたの?」
「言われた通り、丁寧に返そうとはしたんです」
そこで一度言葉が途切れる。
「でも……その男子の必死な表情を見た途端、なんて返せばいいのか分からなくて、結局――『ごめんなさい』ただ、その一言だけを告げることしか出来ませんでした」
あの時は断ってもいいが丁寧にって言ったけど、改めて考えると、そう簡単なことではないのだと実感させられる。
「ちゃんと理由も伝えようと思ったんです。でも、何を言っても傷つける気がして……」
告白の返答は告白された個人の判断で、結の言う通り、どんな返事をしても傷付け、相手を悲しませてしまう。
どちらにとっても辛いことだとは思う。
だけど。
そればかりは乗り越えるしかないと、心の中で思った。
「告白してきた男子も辛かったと思うけど、結も辛かったでしょ」
「……っ」
結が小さく肩を震わせ、目には涙を浮かべていた。
「俺は結のような経験をしたことないから分からないけど、また辛くなったら相談して欲しい。兄として力になるからさ」
そう言って髪を優しく撫でると、一粒の涙が落ち、それをきっかけに、堰を切ったように涙が零れ始める。
「もう子供じゃないから、頭を撫でられるの恥ずかしいです……」
そう言われたので手を離そうとするが――。
「でも……今はこのままで居てください」
仕方なく再び頭を撫で始める。
「今日ぐらいはもっと素直になれよ」
「……うるさいです」
そう返す声は少しだけ弱かったけど、さっきまでよりずっと自然だった。
やがて涙が止まり、顔を上げた結の目元は赤かったが、それでも来た時より表情は柔らかくなっていた。
「今回はありがとう。兄さん」
「力になれたらのなら、何よりだよ」
結は自分の部屋へと戻っていき、再び一人となった。
天井を見上げて、ふと考える。
告白にはする勇気が必要であり、それは果奈に告白する時、痛いほど味わった。
だけど。
辛いのは告白した側だけじゃなく、断る側にもまた別の痛みがあるのだと知る夜となった。




