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もう一度、やり直せるなら 〜告白成功から始まる、それぞれの選択〜  作者: 青サバ
11章 気づいてしまった想いと止められない感情
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11-5 復活と好きな人の存在の強さ

 二日後の週末。


 駿は新人戦の代表選抜戦に挑もうとしていた。


◆◆◆


 今回の代表選抜戦には、いつも以上の意味があった。


 前回の地区大会では、代表入りこそ果たしたものの順位は下位。


 その結果、個人戦ではシードを得られず、県大会を目指すには厳しい組み合わせを強いられた。


 だからこそ、今回は違う。


 三年生は引退し、コートに立つのは一年生と二年生だけ。


 ここで結果を残せば、もっと上を狙える。


 自分の可能性を広げるためにも、絶対に負けられない一日だった。




 朝の集会が始まり、顧問の今江先生が話し始める。


「みんな、よくここまで頑張ってくれた。三年生が居なくなって、新体制で臨む今回の大会だけど、夏休みの激しい暑さの中での練習を乗り越えてきた君たちなら、きっといい試合を繰り広げてくれると私は思う」


 一人ひとりを見渡しながら続ける。


「今日の選抜戦を悔いがないものにするように」


 部員たちのここまでの練習をちゃんと見てきたからこその顧問の言葉だった。


「はい!」


 俺たち部員はそれに答えるかのような大きな返事を返した。




 選抜戦が始まり、あちこちのコートから、乾いた打球音が鳴り響く。


 順調に勝ち星を積み重ね三連勝で迎えた四試合目。


 相手は祐希だった。


 前に戦った時の祐希は、本来の実力を出せていなかった。


 試合後に悩みを打ち明けてくれた以降も、どこか迷いを抱えたまま練習しているように見えた。


(……大丈夫なのかな)


 一瞬だけ胸に不安がよぎるが、すぐ首を横に振った。


(そんなの関係ない。これは代表になる為の大切な試合。一切、妥協なんて許されない)


 決意を強く固めてコートへと立った。




 じゃんけんの結果、祐希からのサーブで始まることになり、それを構え待つ。


 ――パンッ!


 乾いた破裂音と共に、鋭い打球が飛んでくる。


(速いっ!)


 ラケットになんとか当てて返すが、コートから大きく外れてしまう。


 いつも、いやいつも以上にサーブに威力がある気がする。


(前とは別人だ)


 次のサーブを待ちながら祐希を見る。


 その表情は自信に満ち溢れており、前回戦った時の面影を全く感じさせないくらい、生き生きとしていた。


(祐希が吹っ切れたみたいで良かった。でも、勝負は始まったばかり、ここから反撃だ)


 そう簡単に負けるわけにはいかない。


 一本。

 また一本。


 必死に食らいつき、ラケットを振り続ける。


 それでも。


 祐希の勢いは止まらなかった。


 鋭いショット。

 粘り強いラリー。

 隙のない組み立て。


 気づけば流れを奪われたまま――。


 試合終了。


 結果はストレート負けの完敗だった。



 試合後、祐希が話しかけてくる。


「対戦ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとう。吹っ切れたみたいで何よりだよ」


 そう言うと、祐希は少し照れくさそうに頭をかいた。


「浅村先輩が相談に乗ってくれたお陰です」


「そんな大したアドバイスしてないって」


「いや、大きかったです。それに――」


 声が少しだけ小さくなった。


「その女子と付き合うことになりました」


「えっ!?」


 驚きのあまり、つい声が裏返ってしまう。


「おめでとう」


「浅村先輩に言われたように、正面から向き合って、本音を全て告げました」


「てことは、祐希から告白したの?」


「いや……」


 照れながら首を振る。


「自分が全部話したら、向こうも本音を話してくれて」


 一呼吸置く。


「最後に『好き』って言ってくれたんです。だから俺も……好きって伝えました」


 祐希が復活した裏側にこんな話があったとは知らなかったので、少し感動しそうになる。


「そうなんだ、上手く言葉に出来ないけど……本当に良かったな」


「はい、それで迎えた今日の選抜戦、試合中にその子のことを想うと、不思議と力が湧いてくるんです」


 少し照れ笑いを浮かべながら続ける。


「これが、人を好きになることなんですね」


 その笑顔には、もう迷いなんて欠片もなく、不思議と悔しさだけでは終われなかった。


 試合では完敗したけど、その負けには納得できる理由があった。


 技術だけじゃない。


 祐希は、この短い間に人としても大きく前へ進んでいた。



「そうなのかもね」


「はい、それじゃあ次の試合をやってきますね。浅村先輩も自分と同じように、頑張ってください」


「分かった。んっ?」


 胸の奥に、小さな違和感が引っ掛かった。


「それってどういう意味?」


 問いかけるが、祐希はすでに次のコートへ向かって走り出していた。


(なんかモヤモヤするな~)


 何かを見落としているような。

 答えを知っているのに思い出せないような。


 そんな小さな引っ掛かりだけが残りながらも、次の試合へと臨んだ。


 そんなことを思いながらも、次の試合に臨んだ。



 祐希は、その後の試合も立て続けに勝ち星を重ねていく。


 相手が誰であろうと物怖じせず、自分のテニスを貫いていて、コートの外から見ていても分かる。


(強いな……)


 純粋にそう思ったし、負けていられないとも思う。


 人を好きになるだけで強くなれる訳じゃない。


 好きな人がいるから頑張れる。

 応援してくれる人がいるから前を向ける。


 その積み重ねが、人を強くしていく。


 祐希を見ていると、それが痛いほど伝わってきた。



 俺にも、果奈がいる。


 苦しい時も。

 迷った時も。


 支えてくれる存在がいる。


 だからこそ――。


(もっと強くなりたい)


 そんな思いが、静かに胸の奥で燃え始めていた。


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