第7話「テストに出ます」
悠介は教授と只の顔を、交互に眺める。
冷や汗が流れた。間違いなく、只はそこにいる。いや正しくは――見えている。
悠介には見えて、教授には見えない。
自分は見える。
教授は見えない。
それは、イコール?
只が右手を上げた。
「ちなみに、生きてないから、俺」
「それを先に言えええええっ!」
「聞かれてないし」
「聞かれてなくても、言えよ! とても大事な所デスよ、テストに出ますよ!」
「あ、あの、藤谷君?」
服の裾をつかまれて、悠介は我にかえった。
ああ、どうせなら、可愛い女の子につかまれたい――じゃ、なくて!
「もしかして、そこに霊、います?」
「いいえ! いませんよ、いませんとも、霊なんて。あんなのはフィクションです、架空の存在です、白昼夢です!」
「ですが先ほど、只君とおっしゃる方がいると――」
「只君? ただ……あー、いえいえ! タダ券、タダ券って言ったんです。昔、親に肩たたき券をプレゼントしたら、十倍にコピーされて、三ヶ月、毎日肩もまされたことがありまして!」
「私に相談したいことがあるとか……」
「相談ですか、そう「だ」んです。というギャグです! 自虐ギャグです!」
「……」
教授がじっとこちらを睨みつけてくる。
しまった、今のはさすがに苦しかったか。
「ああ!」
いきなり教授が納得した様子で、手を叩いた。
「そうなんです、と相談をかけた冗談なんですね」
………………阿呆で良かったああ。
本来ならジョークを真面目に解説されるなんて、単にスベるよりもいたたまれないが、今回に限り、教授グッジョブ!
「ご理解頂けたようでなによりです。さ、研究室に戻りましょう。道明寺桜餅、買ってきましたから」
「桜餅」
教授がぱっと顔を明るくする。
この御仁は、甘いものに目がないのだ。
「あとでお茶、淹れてあげますね」
「はい。桜餅、いいですねえ」
だらしないほど相好を崩すと、教授は夢見心地で研究室へと向かう。
よし、これでしばらくは霊について忘れてくれそうだ。
教授のあとを追うすがら、悠介はキッと只を振り返ると、こう口を動かした。
「あとで、覚えてろよ」と。
只は肩をすくめていた。




