第40話「空気は読めても、気は読めず」
悠介は歯噛みする。
「……わかったよ」
「そうこなくっちゃ」
教授もどきは嫌らしく、したり顔を浮かべた。
「んじゃま、そろそろお互いの立場も理解できたようだし……」
そう教授もどきがつぶやくと、甘い芳香が一気に消え、部屋を覆っていた圧迫感から解放される。
妖怪フェロモンの放出を止めたのだ。
悠介は足腰に力が戻るのを感じた。
戸塚父も型を解き、汗を拭っている。
「本題に入ろうか。
お前らに望むのは、ある鬼を生きたまま、俺の目の前に差し出すこと。どうだ、簡単だろ?」
「はあ……で、その鬼っていうのは?」
「?」
教授もどきは首を傾げた。
「鬼は鬼だ」
「そうじゃなくて」
悠介はため息混じりに説明する。
「特徴だよ。性別とか、背が高いとか、年はいくつとか……せめてヒントがないとこちらも探しようがない」
「お前、馬鹿か」
「は?」
「もし奴が人間に憑依していたら、そんなのいくら聞いてもわからねえだろ。
――というか、十中八九憑依してる。ヒトの面被っていた方が、何かと便利だからな」
「便利……」
そんな理由でヒトの体を乗っ取るのかよ。
悠介は腹の中がモヤモヤするのを感じた。
「だから探すなら、気で探せ。気で」
「あーはいはい。わかったよ。気ね。気で探せば――気!?」
「他に何で探すんだ」
さも当然とばかりに教授もどきは言い放つ。
「ちょ。ま、待て。人間に気は探れない」
「何故」
「探れないというか、わからない。気なんてものは、感知できないんだよ。人間の能力じゃ」
「何?」
教授もどきは不快感を露わに、眉を寄せる。
「じゃあ、どうやって探すんだよ」
「それをさっきから聞いてたんだって」
「……」
「……」
沈黙が場を支配する。
「――なら、この付近の鬼、全部俺の前に連れて来い」
「無茶言うな!」
悠介の声は悲痛だった。
しかし、教授もどきも譲らない。
「この際手段は問わねえ。とりあえず、なんとしてでも奴を生け捕りにしろ。
それが出来ねえなら、この教授様が死ぬだけだ」
教授もどきは、自らの首を指でかき切る動作をする。
「〜〜っ!」
「わかったな。
なら俺は寝る。鬼を捕まえたら起こせ」
「は、おま、何言っ」
だが、悠介が抗議しきる前に教授の意識が落ちた。
頭がガクリと倒れ、ソファに沈没する。
「教授!」




