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蛇神  作者: ヒノエ
39/43

第39話「鬼ごっこ」

 戸塚父が嫌々ながらも承諾したのを見て、教授もどきはソファに大仰に座る。

 ――やっぱり態度のデカい教授って気持ち悪い。


「じゃーま、色々あったけど、一応話はついたということで。OK?」

「オイ、それはいいが、さっさと周りの霊どもを――」

「要件は一つ」


 教授もどきは、人差し指をピッと立てる。

 セリフを途中で遮られ、戸塚父のこめかみがひくつくのが見えた。

 わずかに口が開き、言い返すのかと思った瞬間、教授もどきがすかさず言葉を次ぐ。


「アンタ方には、鬼ごっこをしてもらう」


 その一言を理解するのに、約三秒かかった。


 ………………は?


「鬼ごっこお?」


 悠介は素っ頓狂な声を上げた。

 戸塚父も「何言ってんだコイツ」と表情で語っている。


「いや、逆か。人間が鬼を追うのだから、逆鬼ごっこだな」

「いや、意味わかんないんだけど」

「鬼を捕まえろっつってんの。言葉通りの意味だ」


 悠介は苦虫を噛み潰したような顔をした。


「……鬼って、パンチパーマに角生えてて、虎柄のパンツはいた?」

「いつの時代のイメージだよと言いたいが、ま、そうだな」

「……それって、ようするに鬼退治じゃないのか」

「退治じゃない。生かしたまま俺の目の前に連れてこい」


 教授もどきはフンと鼻を鳴らす。


 ――鬼、鬼ねえ。

 悠介は先ほどの少女の人鬼を思い出す。


 おそらくだが、あの人鬼は鬼になって日が浅い。鬼としての力なら、かなりレベルの低い方だろう。

しかし――その弱小鬼ですら、あの威圧感、あの気迫。

 人間がまともに戦って勝てる相手ではない。訓練を積んだ退魔士だって、鬼には四〜五人で襲いかかって、ギリギリ勝てるか否かだ。


 それを、生け捕りにしろだあ?


「余計に難しいわああぁっ!」


 悠介は思わず机をバンバンバンッと叩く。


「無茶言うな! 人間が鬼に勝てるわけないだろ!」

「別にお前だけでやれとは言ってない。あそこの「異界を食む者」とやればいいだろう。あれは人間としては十分規格外だ」

「でも――っ」


 なおも反論を続けようとする悠介に、教授もどきが手を伸ばす。

 そして下顎を掴まれ、無理やり顔を近づけさせられた。


「逆らえる立場か、人間」


 噛みつかれんばかりの距離で、教授もどきが牙をむく。


「答えろ。お前は逆らえる立場か」

「……っ」

「ちなみにイエスという解答は認めない。ノーかノーで答えろ」



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