第4話「カーテンの理由」
「死体はともかく、幽霊云々は柳と混ざってないか? それに死体の方も、元ネタは安吾だか基次郎だかの小説だった気がするし」
教授は、ほう、悠介を眺めた。
「藤谷君は柳といえば幽霊なんですね。私などは、どじょうの方を思い浮かべてしまうんですが」
「え、どじょう?」
戸塚が問い返す。
興味を示してくれたのが嬉しいのか、教授の表情がパッと明るくなった。
「はい、柳の下に二匹目のどじょうはおらぬといいまして――」
しまった、このままではミニ講義が始まってしまう。
「だああ! 話は後で! 戸塚が! たっぷりと聞きますから、今はなんでここで寝てたのか、教えてください。まさか、学生ほっぽり出して寝てたわけじゃないんでしょう?」
戸塚が、の部分を強調して言うと、背後で「先輩……」という呟きがしたが、聞こえないふり聞こえないふり。
「ああ、そうですね。確か」
「桜の下に幽霊が出る、までは聞きました」
「そうなんです。桜の下なら幽霊が出るかと思ったんですが、やはりこんな大勢では幽霊も出にくいかと思いまして」
「は?」
「学生さんには、早めに講義を切り上げて、帰ってもらったんですが、私、一目幽霊を見てみたいと思いまして」
「はあ」
「十分ほど待ってみましたが、現れては頂けないようなので、私の姿が見えているのがいけないのだと思い、何か身を隠すものはないかとここに戻ってきたのです」
「……まさか、そのカーテンは」
「はい。なかなか適当な物が見当たらなくて、苦労しました」
教授は自慢気に語る。
「もしやとは思いますが、その、カーテンを見付けて、そのまま、ご就寝なさり、ました?」
変な日本語になってしまった。
教授は苦笑する。
「年は取りたくないものですねえ。つい気持ちよくてうとうとしてしまいました」
つまりだ。
要約すると、この人は幽霊が見たくて、こっそり隠れようとしたけれど、身を隠す物を探している内に眠くなってしまい……。
阿呆か。悠介は何故だか泣きたくなった。




