第37話「正しい教授の使い方」
戸塚父がハッとして、後方を振り返る。
「しまった……!」
その言葉につられ、悠介も入り口を振り返った。
あとで見なければ良かったと後悔したが。
「……うわ!」
そこにはいた。
教授のフェロモンに誘われた――有象無象の幽霊たちが。
悠介が気絶している間に戸塚父が張ったのだろう、簡単な造りの結界がミシミシ音をたてている。
数にすれば、百は下らないだろう。
これではいつ結界が壊れてもおかしくない。
「な、何、コレ……!?」
悠介は驚愕に口をパクパクさせた。
思わず教授の服の裾を必死につかんでしまう。
「圧巻だろ? 校内の全ての幽霊妖怪どもがここに集まってるんだ。教授様の体はこういう使い方もあるって事だな」
「お、お前。こ、こんなことして何考えてんだ!?」
「ん?」
教授もどきは悠介を見下す。
「何って」
「だって、もし結界が壊れてみろ。真っ先に狙われてんのはフェロモン出してるお前だろうが。なんだって、そんな自分を危険にさらすような真似……!?」
「だーかーらー、アンタも今体感してんだろ。教授に近づいた幽霊妖怪は力が入らなくなるの。おわかり?」
「そ、それはそうかもしれないけど……でも、蛇神はすぐに効かなかっただろ! 他にそういうヤツがいたら、どうすんだよ。教授が食われちゃうんだぞ!」
悠介は悲痛に叫ぶ。
だが、教授もどきは意に介したようすもなくあくびをした。
「なんねーよ、そんな事には」
「ど、どういう」
「あーもー、さっきから質問ばっかでうっせえな。
――説明してやれよ、誠さん」
教授もどきは戸塚父を見ながら頭をかく。
脂汗を流しながら、必死に結界を維持しようとしている戸塚父が無言で睨んだ。
「……っ」
「アンタら戸塚家の人間が、八幡國宏教授を見殺しにできるわけねえもんな。命に代えてでも守ってくれるんだろ?」
「黙れっ!」
戸塚父が激昂する。
しかしその瞬間、わずかに気が緩んだのか、結界がミシミシミシッと圧迫される。
「クッ……!」
「はは、いい気味。そうやって全力で守ってくれよ」
戸塚父は視線だけで人が殺せるなら、一瞬で焼き付くせるような苛烈さをもって教授もどきを睨みつけている。
だが、今は結界を守るだけで精一杯なようだった。
悠介はわけがわからず、混乱する。
「いや、待てよ。だってさっきまで戸塚父は、赤い玉みたいなので教授ごと攻撃しようとしてたじゃんか。なんで、命に代えても守るなんて――」
「攻撃?」
戸塚父が眉をひそめる。




