第34話「俺は今、キレている」
「野郎……」
「あんまりヘタな真似しようと思わない方がいいぞ。別に俺は教授様の体に傷が付こうが、どうなろうが構わないんだからな」
そう言って教授もどきは自らの首を切る仕草をする。
悠介はキッと相手を睨みつけた。
「つまり、俺がお前の言うことを聞けば、教授の身は保証するということだな」
「ああ。話が早くて助かるぜ」
悠介は舌打ちする。
「さっさと言えよ。何が望みだ」
「その前に――立ち聞きなんてしてないで、堂々と入ってきたらどうだよ、「誠さん」」
教授もどきはドアに向かってそう叫ぶ。
悠介はとっさに振り返った。
黒ずくめの男が、扉の影から音も立てずに現れる。
その表情はまずいコーヒーでも飲まされたかのように苦味ばしっていた。
「……」
「ご機嫌ナナメって感じだな」
すると戸塚父は、いきなり空中を指ではじくような真似をした。
悠介の目の前を赤い光がハイスピードで過ぎていく。
「おわ!?」
教授もどきが体をのけぞった。
ちょうど数瞬前まで額のあった位置を赤い光球が過ぎていき、壁にぶち当たる。
ジュ、という嫌な音を立ててそれは消えた。
「な、何すんだよ!」
「やかましい。俺は今、キレている。國宏の口で、これ以上わめくな」
戸塚父は表情を変えぬまま、二度、三度と指をはじく。
その度に飛んでくる赤い光を機敏に避けながら、教授もどきは叫んだ。
「ちょ、おま……國宏に当たったらどうすんだよ!?」
「当てるように撃ってんだよ」
なにいぃぃっ!?
まさか教授ごと攻撃するつもりか!
悠介は思わず前に出た。
「ちょ、ちょっと待て、戸塚父! キレるのはわかるけど、ちょっと落ち着いて!」
「お前よりは落ち着いてるよ、坊や」
「そうだろうけど……じゃなくて! ああ、もう言ってるそばから攻撃すんなっ!」
淡々と戸塚父は赤球を発射していく。
教授としては奇跡的なまでに素早い動きで避けていたヤツだったが、早くも息切れし始めていた。
「ハァ……クソ! このオッサン、運動不足、にも、ほどがあるっ!」
顔を真っ赤にしながら、毒づく教授もどき。
そりゃ、教授の体だからなあ。
きっと5日後とかに筋肉痛が来るだろうな。




