第33話「教授もどき」
悠介は目を見張った。
――違う。
これは、教授じゃない。
震える拳を握りしめて、唾を飲む。
「それは……教授なら、そんな答えは返さないからだ」
「……」
「質問に質問で返すような高等テク、あの人にあるものか。同じ事を問われたら、なんでそんなこと聞かれたのかわからないって顔してオドオドするか、てんで検討違いの事を言って、こちらを脱力させるかどっちかだよ」
「……」
「お前、誰なんだ」
教授は、わずか沈黙する。
その口元がフッ、と歪んだ。
「――いずれバレるとは思ったが、こんなにも早くバレるとはな」
うつむいていた頭をもたげ、前髪をかき上げる。
教授とまったく同じ顔をしながら、その目つきはさながら獲物を狙うハイエナのようだった。
自嘲なのか、片眉を吊り上げ、皮肉気に笑う。
悠介は言葉を失った。
あまりに違う。
教授の姿でありながら、教授にはないものばかりの、似ても似つかない存在だった。
「よくわかったな。俺としては、かなり似せたつもりだったが」
「……うわ。本当に、別人かよ……」
「ハ。テメエが言い出したんだろ」
教授――いや教授もどきは立ち上がり机に腰かけると足を組む。
短足胴長の教授の体型だから、本来は格好つかないポーズのはずなのに、やけに堂に入っている。
「まあ、いいけどな。いつまでも天然ボケのフリは肩がこる。むしろさっさと見分けてくれて、感謝したいところかもな」
「は? 感謝?」
教授もどきは背伸びをして、一つあくびをした。
「だってこれで堂々と脅せるだろ」
「脅す!?」
「お前、この体、誰のだと思ってんだよ。まさか、このオッサンには双子の兄弟がいたとか思ってるわけじゃねえんだろ?」
「そ、それは……」
確かに、その可能性はかなり低いだろう。
だが、ということは……教授の体が誰かに乗っ取られていることを意味するんじゃないのか!?
内心の動揺を見破ったかのごとく、教授もどきは片手で顎をいじりながら、不敵にほくそ笑んだ。
「そうとも。間違いなくこの体は、お前の大好きな八幡教授だぜ? 藤谷悠介」




