第32話「本物」
そうだ。それがおかしいんだ!
さっきからイライラせず「ごく普通に」会話できてるじゃないか。
しごく真っ当に受け答えする教授なんて、それこそおかしいだろ。
そうだ。今の鱗の話だって、妙じゃないか。
うっかり物をなくすのはいつものことだとしても、「どうやら風に飛ばされてしまったようですねえ」ぐらい平気でのたまうのが教授だ。
それを、霊の見えてない教授が、只の仕業だと冷静に見破るだって――!?
あり得ない。
天地がひっくり返ったってあり得ない。
「……」
いや、しかし、と悠介は教授を見つめる。
先ほどから教授しか知らないようなことを言っているし、仕草や表情などは間違いなく教授のものだ。
俺の気のせいなのだろうか?
それとも――。
「ああ、クソ」
悠介は小さく舌打ちする。
こんな時こそ、蛇神がいれば「匂いをかがせ」られるのに。
歩く幽霊ホイホイの教授なら、蛇神を魅了するような香りがするはずだからだ。
しかし、戸塚父に尻尾を食われてプライドを傷つけられたのか、いくら呼んでも蛇神は返事をしない。
こちらも先ほどのように暴走させるのが怖くてあまり強気に出れないし……。
かと言って、俺がかいでみたところで、加齢臭しかしないだろうしなあ。
悠介は眉をひそめた。
打開策が特に浮かばない。
困ったぞ。
気のせいだとして流すことは簡単だけれど……。
悠介は頭をかくと、教授の方に向き直る。
「教授」
「はい」
「――本物ですか?」
「は?」
教授が口をあんぐり開けた。
「あなたは本物の教授ですかと聞いています」
「あの、藤谷君。おっしゃている意味がよく……」
「違っていたなら謝ります。俺にはどうも、あなたがいつもの教授らしくないように思えるんです」
「……」
教授は口を閉ざしてしまう。
頭をうつむけて、ここからではよく表情が見えない。
「教授?」
「なぜ、そう思うのですか」




