第31話「冷たい体」
教授は深刻そうに告げる。
しかし、だから何だと言うのだろう。
「はあ。それはまた、変わった体質の人――というかゲテモノ好きというか」
「……驚かないんですか?」
おずおずと教授が聞いてくる。
「驚きませんよ。家も裏家業は祓い屋ですから。似たような人間は何人か知ってます」
とくに姉とか姉とか姉とか。
なんて事を本人の前で言ったら、全裸で縛り上げて路上に放置するぐらいはされそうだが。
「そう、ですか」
「そうですよ。まあ、色々あったあとだから、感覚がマヒしてるだけかもしれませんが」
悠介は教授の肩を叩いて、軽く笑――おうとした。
しかし、その表情が俄かに強張る。
体が――冷たい。
まるで死人、とまでは言わないが、温かみがほとんどない。
人間の体温って、こんなに低くて大丈夫なんだろうか。
――おかしい。
悠介はふと目の前の教授に違和感を抱いた。
「……」
そうだ、冷静に考えてみれば、そもそも何故ここに教授がいるんだ?
自分は確かに「ここで待っていろ」と言ったはずだ。
俺の知る教授なら、その言葉を鵜呑みにして、愚直に待ち続けるはずだ。
悠介は教授をすみからすみまで眺める。
間違いない。それが教授自身であることは確かだ。
しかし……何か変だ。
「教授」
「はい」
「俺が渡した鱗、どうされました?」
「鱗ですか? もちろんありますが」
そう言ってポケットから二枚の鱗を取り出す。
これも間違いなく、蛇神の鱗だった。
「本物ですね……」
「え?」
蛇神の鱗は複製などできない。
って、え――二枚?!
「教授、もう一枚は? 確か三枚渡したはずですよね」
「ええ。それが、あの――只君ですか? どうも彼が一枚持っていってしまったようで」
「只が?」
「はい。藤谷君の話ぶりから、何か大切かと思って持っていたんですが、いきなり奪われるかのように一枚だけ飛んでいってしまったので、おそらくは」
「……」
「あの……すみません。やはり問題だったでしょうか」
悠介は黙り込む。
別に只に奪われたのは問題ない。
あれは、幽霊が使ったところで役にはたたない代物だ。
問題はもっと別の所にある気がする。
先ほどから感じている不自然さ――。
しかし、何だろう。
教授自身も特におかしいところはなさそうだし……。
「え」
教授がおかしくない?
あの万年常春のーたりんが?
特におかしな所がないだって――!?




