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蛇神  作者: ヒノエ
31/43

第31話「冷たい体」

 教授は深刻そうに告げる。

 しかし、だから何だと言うのだろう。


「はあ。それはまた、変わった体質の人――というかゲテモノ好きというか」

「……驚かないんですか?」


 おずおずと教授が聞いてくる。


「驚きませんよ。家も裏家業は祓い屋ですから。似たような人間は何人か知ってます」


 とくに姉とか姉とか姉とか。

 なんて事を本人の前で言ったら、全裸で縛り上げて路上に放置するぐらいはされそうだが。


「そう、ですか」

「そうですよ。まあ、色々あったあとだから、感覚がマヒしてるだけかもしれませんが」


 悠介は教授の肩を叩いて、軽く笑――おうとした。

 しかし、その表情が俄かに強張る。


 体が――冷たい。


 まるで死人、とまでは言わないが、温かみがほとんどない。

 人間の体温って、こんなに低くて大丈夫なんだろうか。


 ――おかしい。


 悠介はふと目の前の教授に違和感を抱いた。


「……」


 そうだ、冷静に考えてみれば、そもそも何故ここに教授がいるんだ?

 自分は確かに「ここで待っていろ」と言ったはずだ。

 俺の知る教授なら、その言葉を鵜呑みにして、愚直に待ち続けるはずだ。


 悠介は教授をすみからすみまで眺める。

 間違いない。それが教授自身であることは確かだ。


 しかし……何か変だ。


「教授」

「はい」

「俺が渡した鱗、どうされました?」

「鱗ですか? もちろんありますが」


 そう言ってポケットから二枚の鱗を取り出す。

 これも間違いなく、蛇神の鱗だった。


「本物ですね……」

「え?」


 蛇神の鱗は複製などできない。


 って、え――二枚?!


「教授、もう一枚は? 確か三枚渡したはずですよね」

「ええ。それが、あの――只君ですか? どうも彼が一枚持っていってしまったようで」

「只が?」

「はい。藤谷君の話ぶりから、何か大切かと思って持っていたんですが、いきなり奪われるかのように一枚だけ飛んでいってしまったので、おそらくは」

「……」

「あの……すみません。やはり問題だったでしょうか」


 悠介は黙り込む。


 別に只に奪われたのは問題ない。

 あれは、幽霊が使ったところで役にはたたない代物だ。


 問題はもっと別の所にある気がする。

 先ほどから感じている不自然さ――。

 しかし、何だろう。

 教授自身も特におかしいところはなさそうだし……。


「え」


 教授がおかしくない?


 あの万年常春のーたりんが?

 特におかしな所がないだって――!?


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