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蛇神  作者: ヒノエ
24/43

第24話「パペット」

 ドクン!

 心臓が跳ねる。

 胸の中で消化しきれない衝動がうねりをあげる。


 悠介は動揺を隠せない。

 眠りについていた蛇神が、目を覚ましていく。


「カ、ハ――ッ」


 少女の手が宙をさ迷う。

 目の前が真っ赤にチカチカと明滅する。


 ――マズイ!


 悠介はとっさに胸をおさえた。

 興奮が止まらない。


「や、めろ……」


 自分の中で蛇神の力が膨れ上がっていくのがわかる。

 熱い。体が熱い。

 呼吸が荒れ、血流がうねる。


 蛇神が――暴走する!


「ダメだ……蛇神! これ以上暴れるなっ」


 しかし、悠介の声に逆らうように、蛇神が雄叫びを上げた。


 ――出セ、藤谷悠介。オ主デハ、アノ男ニハ太刀打チデキマイ。

 妾ノ力、使ウガイイ。


「ぃ、やだ……!」


 頭がガンガン痛む。

 悠介は抵抗するが、蛇神は体の内側から、手を足を絡め取ろうとしてくる。


 ――サア! ソノ身ヲ妾二捧ゲヨ!


「う、ああぁっ!」


 悠介が右手で空をなぎ払う。

 バチンッ、と男の結界が弾け飛ぶ。


「何ッ!?」


 男は、とっさに身をかばう。

 その瞬間、少女は男の手から離れ、そのまま床に落下した。


「――ッ、ガハ、ゲホゲホッ!」


 ようやく解放された少女は、喉を抑え、大きく咳き込んだ。

 しかし悠介にそれを喜ぶ余裕などない。


 悠介の全神経は蛇神に抗うことだけに注がれていた。


 ――クク、抵抗ナドスルナ。素直二渡セバ楽二ナレルトイウニ。


「うる、せえ!」


 ――強情ナ男ダノウ。嫌イデハナイガナ。シカシ妾ニモ我慢ノ限度トイウモノガアル。


「……なっ!?」


 すると、両手が悠介の意志に逆らって、攻撃印を組み始めた。

 まるでパペットの人形のように、内側から強制的に動かされているのだ。


「蛇神ぃっ!」


 侵蝕されている証として、その腕には赤黒い蛇のウロコが浮かび上がってくる。


 これが、全身に回ったら、完全に乗っ取られてしまう!


 ――ハハハ、無駄ヨ!


 悠介の右手が剣の形を取り、黒ずくめの男に振りかざされた。


「どわっ!?」


 男が気配を察して、左に飛ぶ。

 次の瞬間、先ほどまで男がいた空間に、鎌鼬が走った。


 金属の棚は左右に切られ、詰められていた資料がズタズタに引き裂かれる。


「ああ、教授の資料!」

「そんなん気にする余裕があんのか、坊や!」

「あれは、遠野の山奥まで行って、教授が五年かけて集めた民話なんだぞ! そんなん言うな!」


 ――ハハハハハ! 愉快、愉快ジャ、悠介。オ主ノ体ハマコト居心地ガヨイゾ!


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