第24話「パペット」
ドクン!
心臓が跳ねる。
胸の中で消化しきれない衝動がうねりをあげる。
悠介は動揺を隠せない。
眠りについていた蛇神が、目を覚ましていく。
「カ、ハ――ッ」
少女の手が宙をさ迷う。
目の前が真っ赤にチカチカと明滅する。
――マズイ!
悠介はとっさに胸をおさえた。
興奮が止まらない。
「や、めろ……」
自分の中で蛇神の力が膨れ上がっていくのがわかる。
熱い。体が熱い。
呼吸が荒れ、血流がうねる。
蛇神が――暴走する!
「ダメだ……蛇神! これ以上暴れるなっ」
しかし、悠介の声に逆らうように、蛇神が雄叫びを上げた。
――出セ、藤谷悠介。オ主デハ、アノ男ニハ太刀打チデキマイ。
妾ノ力、使ウガイイ。
「ぃ、やだ……!」
頭がガンガン痛む。
悠介は抵抗するが、蛇神は体の内側から、手を足を絡め取ろうとしてくる。
――サア! ソノ身ヲ妾二捧ゲヨ!
「う、ああぁっ!」
悠介が右手で空をなぎ払う。
バチンッ、と男の結界が弾け飛ぶ。
「何ッ!?」
男は、とっさに身をかばう。
その瞬間、少女は男の手から離れ、そのまま床に落下した。
「――ッ、ガハ、ゲホゲホッ!」
ようやく解放された少女は、喉を抑え、大きく咳き込んだ。
しかし悠介にそれを喜ぶ余裕などない。
悠介の全神経は蛇神に抗うことだけに注がれていた。
――クク、抵抗ナドスルナ。素直二渡セバ楽二ナレルトイウニ。
「うる、せえ!」
――強情ナ男ダノウ。嫌イデハナイガナ。シカシ妾ニモ我慢ノ限度トイウモノガアル。
「……なっ!?」
すると、両手が悠介の意志に逆らって、攻撃印を組み始めた。
まるでパペットの人形のように、内側から強制的に動かされているのだ。
「蛇神ぃっ!」
侵蝕されている証として、その腕には赤黒い蛇のウロコが浮かび上がってくる。
これが、全身に回ったら、完全に乗っ取られてしまう!
――ハハハ、無駄ヨ!
悠介の右手が剣の形を取り、黒ずくめの男に振りかざされた。
「どわっ!?」
男が気配を察して、左に飛ぶ。
次の瞬間、先ほどまで男がいた空間に、鎌鼬が走った。
金属の棚は左右に切られ、詰められていた資料がズタズタに引き裂かれる。
「ああ、教授の資料!」
「そんなん気にする余裕があんのか、坊や!」
「あれは、遠野の山奥まで行って、教授が五年かけて集めた民話なんだぞ! そんなん言うな!」
――ハハハハハ! 愉快、愉快ジャ、悠介。オ主ノ体ハマコト居心地ガヨイゾ!




