第22話「ふざけんな」
悠介の視線などものともせず、男は肩をすくめる。
「坊やも知ってんだろ。國宏の異常な憑依体質――霊の吸引力とでもいうか」
悠介は答えないが、心の中で頷いた。
教授の百鬼夜行は一度見たら、忘れようにも忘れられない。
「アイツは生まれつきああでな。小さい頃から、常に幽霊妖怪に憑きまとわれてきたんだ。
それが何を意味するか、わかるか?」
「……いや」
「孤独だよ」
悠介は意味が分からず、目で男に問う。
「四六時中、大量の霊を憑かせている人間に、誰も好きこのんで近づこうとはしねえんだ。少しでも霊感があればな、見えなくても異質な雰囲気を感じとって、いつの間にか國宏から離れていく。
もし霊感が完全にゼロの人間がいれば話は別だが、そんな人間そこら中に転がっているはずもない。
――結果、アイツは孤独になった。自分には全く身に覚えのない理由のせいでな」
「……」
「國宏に近寄る人間が一人もいなかったわけじゃない。だが連中のほとんどは、國宏のその体質目当てだった。
好奇心や研究意欲で近づくくらいなら、まだマシな方だ。
背後霊に操られて無意識に襲おうとする者。
自分に憑いた霊を國宏になすりつけようとする者。
珍しい体質を見せ物にして、金を稼ごうとする者――いろいろだ。
それぞれの目的は違うにせよ、進んで國宏と親しくなろうとする者は、ほぼ間違いなく、國宏のカラダだけが欲しかったんだよ。
――だから、俺はお前に問う。
何故、お前だけが、単なる善良な好意から、近づいたのだと言い切れるか」
それだけ吐き捨てると、男は口を閉ざした。
一分の隙も嘘も欺瞞も許さないと、無言で訴える。
沈黙が、悠介を突き刺していた。
――いったい、何なんだ。このオッサンは。
怒りとも呆れともつかない感情が、ふつふつと体内を駆け巡る。
渦巻くエネルギーが、発散場所を求めている。
悠介はそれを爆発させぬよう静かに、しかし力強く言った。
「ふざけんな」
次いで、言葉が溢れ出る。
「聞いてりゃ、勝手なことばかり言いやがって。今まで教授にろくな奴が近づかなかったからって、なんで俺までソイツらと同じに扱われなきゃなんねえんだよ。
第一、アンタはどうなんだ。
さも教授の味方みたいな口振りだったけど、教授がそんな目に合ってるって知ってて、何か手を打ったのかよ。
――あのさ、俺はアンタが何者かも、教授との付き合いがどれくらい深いのかも知らねえよ?
でもな。
教授がアンタだけのもんだと思うなよ、オッサン」




