第21話「憑き物筋」
憑き物筋。それは、民間信仰の一つで、動物霊などがとり憑いた血筋のことだ。
憑かれた家はその霊を使役して富や力を得る代わりに、周囲に害を与えるとして、忌み嫌われる。
現代では、ほとんど絶えたと言われているが……。
「聞けば五百年ぶりの、「男」の継承者だそうじゃないか。よっぽど蛇神に好かれたな」
「く……」
やはり、コイツ、知っている。
どの程度までかはわからないが、藤谷家について――いや、蛇神について知っているんだ。
これ以上、男に飲まれて、不要な情報を渡したくない。
悠介は、拳を強く握りしめた。
「御託はいい。何が言いたい」
フン、と男は鼻を鳴らす。
「お前も運がないよなあ。本来なら、黙ってても藤谷家当主の座が転がったきただろうに。なまじ蛇神に気に入られちまったばっかりに、借り腹扱いか。
継承者なんてのは、要するに体のいい生贄なんだろ?」
「は、勝手なこと言うなよ。
テメェに何がわかる。今までのどの継承者も、その職務に誇りを抱いて生きてきたんだ。彼女たちは身を呈して、家を守ってきたんだよ。
それを赤の他人にどうこう言われる筋合いはない!」
ふーん、と男は腕を組む。
「じゃ、なにか。お前は継承者になって良かったとか思ってんのか」
「っ、それは……!」
イエスと言いたい。
しかし、継承者が蛇神への「生贄」であることは悠介自身否定できない。
言葉を失った悠介に男はたたみかける。
「どうせ、蛇神なんてさっさとくたばるなり、どっかしら消えて欲しいと思ってんだろ。憑き物筋なんて、今時リスクばっかで、なんのメリットもねえしな」
「……そうだよ。それの何が悪い」
「悪かないさ。けどな」
男は凄む。
「もし國宏に押し付けようってんなら、そんな考え、今すぐ捨てろ」
「は……」
悠介は一瞬、何を言われたのか、わからなかった。
蛇神の継承問題は藤谷家内で解決すべきことだし、それを他人になすりつけるどころか、話すつもりもなかった。
瞬間、激情が悠介を支配する。
「ふざけんな! 俺が教授にそんなことするわけねえだろ!」
「だといいけどな」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味だけど?」




