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蛇神  作者: ヒノエ
20/43

第20話「別格」

「これ一枚でも売ればウン百万だろうな。好事家がこぞって買い求めるぞ」


 男は挑発的に犬歯を剥いて笑う。


「アンタ……何故、それを」


 悠介はたたらを踏む。

 蛇神については、一族の中でも、当主や継承者などの極一部しか知らない秘密のはずだ。

 ましてや、外部に漏れるなんて――あり得ない。


「何故、それを、か」


 男はフッと目を伏せた。


「あまりそういう言い方はしない方がいいぞ。相手に答えを教えてるようなもんだからな」

「……っ!」


 野郎――カマかけやがったな!


「テメェ……」

「睨むなよ。引っかかるお前が悪い」

「鱗、返せ! アンタにあげた覚えはない」


 怒りに身を任せ、悠介は乱暴に男から鱗を奪い返そうとする。

 しかし、男は長身を利用して、ヒョイとその手をかわした。


「なんだよ。國宏にはくれてやったんだろ。ケチケチすんなって」

「教授は別格だ」

「別格ねえ」


 吠える悠介に、男はポンポン頭をなでる。

 完全に馬鹿にされている。

 悠介は全身の血がカッとなり、男の手を払いのけた。


「教授とアンタなんかじゃ、比べものになんねえよ。あの人がいなきゃ俺は――っ!」

「やめて、おけ……小僧」


 ハッと我に返る。

 ジーンズの裾を、少女の人鬼が握りしめていた。


「貴様、では、勝てん」

「なんだよ。邪魔すんなよ。俺は今」

「やつだ」

「は?」

「私を、こんな体に、した……のは、そやつだ」


 硬直する。

 悠介はゆっくりと視線を男に向けた。


「やつは、異を食む、者――人、では、ない」

「な……!?」


 人間じゃ、ない?

 改めて、悠介は男を凝視する。

 たしかに、悠介は大した訓練もつんでいないし、慌てていればヒトとそうでないモノを見間違えることもある。

 しかし、冷静にさえなれば、そんな凡ミスをするわけがないのだ。


 もう一度、頭のてっぺんから足先まで、男を見た。

 しかし――何度確認しても、人間だった。


「は、失礼だな。俺はれっきとした人間だぜ? 生まれがちょっと特殊なだけだ。

 その点お前と似たようなもんじゃないのか。

 ――なあ、蛇神憑き、藤谷家の御曹司様よ」


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