第19話「問う者」
「なんでわかるんだ、って思ってる?」
「――っ!」
「だからまだ坊やなんだよ、悠介クン」
うう、何なんだ、この人。
さっきから、相手のペースに乗せられっぱなしだ。
亀の甲より年の甲というわけじゃないが、どうにも向こうの方が一枚上手らしい。
これ以上、詮索しようとしても、またあしらわれるだけだろう。
悠介は質問の方向を転換する。
「――そうだ! それより戸塚!」
「戸塚?」
「ここに俺の後輩がいたはずなんです。知りませんか?」
男はポンと手を打った。
「ああ、あき」
しかし言いかけて、男は思い直したように唇をずらした。
「あの子なら、俺が保護しといた。もちろん怪我一つないぞ」
「本当ですか!」
「今頃、俺の研究室でグースカ寝てるだろう」
――そう、か。
無事、なのか。
悠介は一気に全身の力が抜けた。
「はああ」
今回、戸塚は完全にとばっちりを受けた形だ。
この騒動を予測出来なかったとはいえ、大量に霊のいる場所で独りきりにさせてしまったのは、自分の過失。
それで、万が一アイツに危害が加えられるようなことがあれば、戸塚の家族や恋人に顔向けできないところだった。
「良かった……」
額に手を当てて、大きく息をつく。
これでひとまず戸塚の件はなんとかなった。
「そういや國宏はどこだ」
「え? あ、教授なら、下に置いてきました。――そうだ、すぐ戻らないと」
「なに」
突如、男の眼光が鋭くなる。
途端に、纏っていた雰囲気が張り詰めたものへと変わっていく。
「國宏を一人で置いてきたのか」
「え……」
「アイツが一切、異界の存在を感知できないことは知ってるはずだよな。何故だ」
詰問口調で男はせめてくる。
突然の豹変にたじろいだ悠介は、しどろもどろに答えた。
「え、と。それは、その、時間がなくて。戸塚も危険な状態かもしれなかったし……」
「それで。危険だと知ってて國宏を置き去りにしたのか」
男が眉根をよせる。
これは……本気で怒って、る?
「い、一応護身用の術は施して――」
男がこちらに手を伸ばす。
悠介の体がビクっとはねた。
殴られるかと思ったのだ。
しかし、その手は悠介の肩口にそっと触れるだけだった。
「あ……」
男の指先には、透明な鱗があった。
部屋に入るときに、悠介がくわえていたのをいつの間にか落としていたのだろう。
男は鱗をひっくり返しては、まじまじと見つめた。
「……蛇神の鱗か。なるほどな。これを國宏に渡したのか」
「――な!?」
悠介の目が驚愕に開く。




