表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛇神  作者: ヒノエ
18/43

第18話「黒ずくめ」

 慌てて悠介は振り返る。


 三十代後半ぐらいのオッサンが、壁に寄りかかって立っていた。

 黒のタートルネック、黒のスラックス、黒の革靴に黒いポニーテールと、完全に黒ずくしだ。

 なまじ顔は悪くないだけに、余計胡散臭い。


「な、何ですか、アンタ」

「ん? 國宏から聞いてないのか」

「くにひろ?」

「八幡國宏。坊やンとこの教授様だよ」

「ああ、教授の……」


 やはた、くにひろ。

 八幡、國宏。

 ――八幡國宏教授!


「え、きょ、教授のお知り合い、ですか!?」

「おいおい、自分んとこの教授の名前くらい覚えておけよ」

「い、いえ、その、忘れてたとかじゃなくて……っ」


 悠介は急いで釈明する。

 そう、決して教授の名前を忘れていたわけではない。

 しかし、教授より十は年下であろうこの男が、まさか教授を下の名で呼び捨てするとは思わなかったのだ。


「ちょっと、その、普段教授の名前、言ったりしないので、ピンとこなくて」

「ふうん?」


 両腕を組み、男は上目遣いで笑う。

 何もかもわかってますよ、と言わんばかりだ。


「ま、いいけど。考えたら、アイツがそこまで気が利くわけないしな」

「はあ」

「じゃあ、改めて。お久しぶり、藤谷悠介クン。いつも愚息がお世話になっています」


 男は細い長身を折って、深々と頭を下げる。

 今までの態度から一変した丁寧な動作に、思わず悠介はつられて礼をする。


「あ、いえ。こちらこそ、息子さんにはいつもお世話になっています」


 ん?

 待て、藤谷悠介。

 今のやりとり、実はツッコむ所が山ほどなかったか。


 なんで俺の名前、知ってんの、とか。

 はじめましてじゃなくて、お久しぶり、とか。

 愚息って、息子のことだよね、とか。


「……えーと」


 どうしよう。どこからツッコめばいいのやら。


「今後トモヨロシクオ願イシマス?」

「カタコトな上に疑問形になってるぞ、少年」


 男は何が面白いのか、クツクツと肩を震わせていた。


「いやあ、息子って誰の事だぐらい聞かれるかと思ったが、予想外の反応が来たな。……クク、よろしくか。こちらこそ、末永いお付き合いをお願いしたいね」


 オッサンはあごひげをいじりながら、こちらを舐めるように覗いてくる。

 悠介は思わず後ずさった。


「あ、いや、さっきは勢いで言ってしまったけど、そんなにヨロシクしたいわけでは」

「心の声が漏れてるぞ、坊や」

「あ」


 悠介はつい間の抜けた声を出してしまった。

 それを見た男は盛大に吹き出す。


「なんか……話に聞いてたのと違うな。結構天然?」

「なんですか、天然って。教授じゃあるまいし」

「はは! 言うねえ、気に入った。坊やは一見真面目そうだが、実は面倒くさがりで口が悪いんだな」


 な、なんでわかるんだ……まだ会って五分もたってないのに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ