第15話「三枚の鱗」
え……?
カチ、と悠介の頭の中で、思考の歯車が噛み合った。
身体が緊張し、心臓が鼓動を速くする。
「なんだって……」
階上へと向かう歩みを止めた。
口元に手を当て、かぶりをふると、悠介はゆっくりと、記憶を呼び戻した。
――あ、これなんか面白そうですよ。えっと、社会学部の八幡教授の研究室には、座敷わらしが住み着いている……。
――今は部屋、戻らない方がいい。結界が破けてる。
言葉がつながる。
悠介はハッとした。
「……しまった!」
バカか、俺は!
研究室には、まだ戸塚が残っているじゃないか!
戸塚は教授と同じく、霊や妖怪を感知できないタイプだ。
七不思議の霊が凶暴化したとして、そこで真っ先に狙われるのは――!
「ああ、クソ! なんで気付かなかったんだ」
悠介は乱暴に頭をかきむしる。
自分の無能さに腹は立つが、今考えるべきはそれじゃない。
「教授! ここで待っていてください! すぐに戻ります」
「藤谷君!」
悠介は教授に向かって、小さな巾着袋を投げつけた。
教授が恐る恐る、中身を取り出す。
プラスチックのような薄い楕円形のものが三枚。
「これは……鱗?」
「出来れば使いたくなかったんですが、この際仕方ないです。少しでも異変を感じたら、その鱗を思いっきり噛んでください。一枚につき、効果は一回ですから」
「え、あの」
「本当にすぐ戻ります!」
悔しいが、説明する隙が惜しい。
悠介は呆然とする教授を置いて、階段を駆け上がった。
ああ、畜生!
何もかも後手に回っている。
本当は教授だって、一人にさせたくない。
だが、あの基礎体力皆無の教授が四階まで上がるのを待っていたら、戸塚の命がもたないかも知れないのだ。
だああ、次から次へと問題ばかり起きやがってえええっ!




